内側半月板損傷(外側半月板損傷)の手術は関節鏡視下手術で行います。
今回は半月板損傷の症状や手術、リハビリ、スポーツ復帰の時期や生活での注意点についてご紹介します。
半月板損傷はスポーツ選手に多く、サッカーやバスケ、野球など様々なスポーツで起こります。
半月板は膝のつなぎ目にある重要なもので、クッションのように衝撃を吸収する働きをします。
まずは半月板の構造について簡単にご紹介します。
半月板の構造とは?
半月板は膝関節のつなぎ目にあります。
大腿骨と脛骨の間にあり、膝を曲げ伸ばしする際に半月板も一緒に動きます。
膝の内側と外側に半月板があり、それぞれ内側半月板と外側半月板といいます。
半月板は線維軟骨で形成されており、内側半月板はC型、外側半月板はO型の形をしています。
内側半月板は関節包を介して、内側側副靭帯や半膜様筋腱とつながっており可動性は少ないです。
外側半月板は外側側副靭帯との連結はなく可動性は内側半月板より大きいのが特徴です。
半月板の詳しい機能
①関節の適合性を良くする
②緩衝作用(クッション作用)
③関節可動域を適正に保つ
④関節内圧を均等化する
⑤滑液を分散させる
半月板があることで衝撃による大腿骨と脛骨へのダメージが軽減されています。
半月板の血行は外側の10~30%のみに存在し、真ん中と内側は血行が乏しくなっています。
半月板は前・中・後にわかれており、それぞれ前節・中節・後節といいます。
膝を曲げるにつれて半月板と大腿骨の接触位地が徐々に前節から後節へと移動していきます。
円板状半月とは?
半月板の形状は正常の場合と円板状半月と言われる『半月板の奇形』があります。
95%の方が両側に存在するとされています。
円板状半月は発生率3~7%といわれ、ほとんどが外側半月板に発生します。
円板状半月は構造上、比較的軽微な外力で損傷します。
半月板の動きや機能についてはこちらでご紹介しています。
ご興味がある方はご覧ください。
半月板損傷とは?
半月板損傷の症状として、膝崩れ、ロッキング(膝が動かなくなる)やクリック音、膝の中のひっかかりなどの症状がみられます。
半月板損傷が起こると炎症症状がみられ、膝のお皿がプカプカした状態である膝蓋跳動(しつがいちょうどう)、熱感、腫れなどの症状もみられます。
半月板損傷はレントゲンではわからずMRI検査を行います。
半月板損傷の断裂にはいくつか種類があり、縦断裂・横断裂・水平断裂・バケツ柄状断裂などがあります。
半月板損傷の手術とは?
半月板損傷の手術は関節鏡視下手術で行います。
関節鏡視下手術とは膝に小さな穴を3箇所程度あけ、そこから細い管を入れ手術を行います。
管からは小型のカメラを入れモニターで拡大して映し手術を行います。
小さな穴は数ミリ程度位であり、手術で大きく切ることはありません。
手術では半月板の切除術や縫合術を行いますが、基本的に半月板や軟骨は再生しません。
そのため手術をしても半月板が元に戻るというわけではありません。
半月板切除術とは?
半月板切除術とは半月板の損傷部位や不安定な部分を切除する手術になります。
半月板が損傷した状態では半月板が引っかかったりロッキングを起こすため切除を行います。
切除後、半月板の形を整え手術終了です。
半月板縫合術とは?
半月板の縫合術は適応になる場合と適応にならない場合があります。
これは半月板の損傷部位によって決まります。
半月板には血行の良い部分と乏しい部分が存在します。
血行の良い部分は半月板の外側で、内側に移動するにつれ血行が乏しくなります。
そのため半月板縫合術の適応は半月板の外側1/3の損傷の場合になります。
マイクロフラクチャー法とは?
半月板損傷に合わせ膝の軟骨も損傷しているケースがあります。
マイクロフラクチャー法とは軟骨の再生を促す手術になります。
方法は軟骨の損傷がある部分に専用の器具を使って小さい穴をいくつか開けます。
穴を開けることで骨髄が刺激され再生を促すといった方法になります。
半月板損傷後のリハビリとは?
リハビリは手術翌日より開始となります。
入院期間はおよそ1〜3週間程度です。
膝の関節可動域練習(曲げ伸ばし)は手術翌日より開始となり、退院時の目標は膝を完全に伸ばせること(左右差なし)、曲げる方は120°程度曲がることを目標とします。
荷重は手術翌日より開始となりますが足底板を使用することが多く、足底板を作成し届いてから荷重開始になることが多いです。
足底板装着し荷重が開始になると、退院までの3週間で全体重をかけられるように練習をします。
いきなり全体重をかけて歩くと膝に負担がかかり腫れたり痛みが出てるため、徐々に体重を増やしていくような方法で荷重の練習を行っていきます。
基本的に歩行練習は松葉杖を使い、退院時に全体重が可能だったとしても片方又は両方の松葉杖を使っての歩行で退院となります。
手術後3週間では筋力も完全には戻らず、杖なしで長い距離の歩行を行うと膝に負担がかかって炎症症状が悪化する恐れがあるためです。
しばらくは杖なし歩行は自宅内のみにし、屋外は松葉杖を持って歩かれたほうが膝のためには良いです。
歩行や生活動作の練習の他に、筋力トレーニングも行っていきます。
またスクワットや自転車こぎなどさまざまなことを行います。
リハビリを行う上で重要なポイントが二つあります。
一つは軟骨損傷の有無です。
半月板の損傷が強い場合、軟骨まで傷んでいるケースがあります。
軟骨まで傷んでいると膝が炎症を起こしやすく腫れたり痛みがでます。
軟骨まで損傷がある場合は歩行や筋力トレーニングは慎重に行わなければなりません。
もう一つは半月板損傷の位置です。
先ほどご紹介したように半月板には前・中・後節と3つの位置に分けられます。
膝を伸ばした位置では前節に負担がかかりやすく、膝を曲げていくにつれて後ろへ移動していきます。
例えば半月板の後ろ(後節)が損傷し手術を行った場合、膝を深く曲げる練習は注意が必要です。
スクワットの練習では膝を深く曲げすぎないように注意をしたり、生活動作ではしゃがむ動作に注意が必要です。
退院後は外来のリハビリを行っていきます。
手術後1〜2ヶ月頃よりジョギングが開始となり、その後徐々にランニングやダッシュなどレベルを上げていきます。
スポーツ復帰はおよそ6ヶ月以降となります。
スポーツ復帰をする上で注意していただきたいのが、円板状半月で外側の半月板損傷の場合です。これに加え軟骨損傷がある場合は特に復帰時期には注意が必要です。
なぜかというと、膝運動時に内側半月板に比べ外側半月板の方が動きが大きく負担がかかりやすいことや、円板状半月は正常の半月板と違うためです。
半月板の損傷部位や軟骨の状態、手術方法でもリハビリの進行やスポーツ復帰の時期は大きく異なるため、主治医の指示に従って下さい。
生活での注意点とは?
退院後に注意していただきたいのは炎症症状の悪化です。
炎症症状が悪化すると膝の動きが悪くなり痛みが出ます。
日常生活と比べ入院中の生活はリハビリ以外ほとんど動く機会がありません。
普段の生活は仕事や買い物、趣味や家事といった多くのことを行っていますが、入院中は食事も出てきますしベッドの上にいる時間が長くなります。
しかし退院後は食事や身の回りのことなどすべて行わなければならいません。
そのため自然と動く量が増え、膝に負担がかかり炎症が悪化するといったことが起こります。
炎症が悪化しないように松葉杖を使って膝への負担を減らしたり、ご家族にも手伝ってもらい退院直後は注意をし生活を送りましょう。
まとめ
半月板は膝にクッション作用をしていたり適合を良くしたりと重要な作用をしています。
半月板損傷の手術は関節鏡視下手術で行います。
手術は切除術や縫合術が行われ、軟骨損傷が合わせてある場合はマイクロフラクチャー法を行うことがあります。
リハビリは手術翌日より開始となります。
半月板損傷の度合いによって期間や時期は異なりますが、入院期間はおよそ1〜3週間、スポーツ復帰は6ヶ月以降となります。
今回は半月板損傷の手術やリハビリについてご紹介してきました。
半月板損傷はスポーツ選手にとって身近なケガのため、知識としてしっかりと抑えておきましょう。
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