実は膝のお皿も肩と一緒で脱臼することがあります!
膝のお皿のことを膝蓋骨といいます。
膝蓋骨脱臼は特に思春期の女子に多くみられます。
膝に不安がある方は一度この記事に目を通していただくことをお勧めします。
今回は膝蓋骨脱臼や受傷場面、トレーニング方法や内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)再建術についてご紹介します。
膝蓋骨とは?
膝の前側には皿があります。
このお皿のことを膝蓋骨といいます。
膝蓋骨は膝関節の中の一つの骨でとても重要です。
まずはイラストで見てみましょう。
膝蓋骨は大腿骨の前側にあります。
大腿骨の下側には溝があり、膝を曲げ伸ばしした際にそれにそって膝蓋骨が動きます。
この大腿骨の下側と膝蓋骨も関節の一つと分類され、膝蓋大腿関節といいます。
膝蓋骨脱臼とは?
膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨が膝蓋大腿関節から外れた状態です。
正常の膝蓋骨がここですが、外れるとこのようになります。
膝蓋骨脱臼は10〜20歳の思春期の女子に多くみられます。
受傷する場面として、初回脱臼ではスポーツ時の非接触損傷で起こることが多いです。
膝が軽く曲がった状態で、膝の外反・下腿外旋位の状態で大腿四頭筋に急に力が入った時に膝蓋骨の脱臼が起こります。
このような膝の状態の時です。
日常生活で起こる場面として、歩いている最中に後ろを振り返った瞬間や軽くつまづいた時に脱臼が起こることもあります。
膝蓋骨は外側に外れることが多く、外れたときは膝が『ガクッ』となり転倒することが多いです。
初めて脱臼をしたときは、来院時にすでに整復位に戻っていることが多くあり、レントゲン上で明らかな骨損傷がない場合は見逃しやすくなります。
一度脱臼をすると20〜50%は再度脱臼をする可能性があり、反復性膝蓋骨脱臼になることもあります。
膝蓋骨の外側脱臼を防ぐには?
膝蓋骨の外側脱臼を防ぐには内側の靭帯や筋肉が重要です。
内側の靭帯では特に内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)です。
イラストで見てみましょう。
内側膝蓋大腿靭帯は内側膝蓋支帯の深層部にあります。
内側膝蓋大腿靭帯は膝蓋骨の外側制動の50〜60%の働きをするため、とても重要な靭帯の一つです。
筋肉は膝蓋骨を内側へ引っ張る内側広筋が重要になります。
膝蓋骨脱臼の原因とは?
膝蓋骨の脱臼は外傷により起こることもありますが、産まれつきの先天的要素や体の構造的な解剖学的要素が大きく関係します。
影響が大きい要素として、①Q角の増大、②膝蓋骨が高い位置にある、③膝蓋骨の外側の支持組織の過緊張、④内側広筋の機能不全、⑤外反膝、⑥膝蓋骨の形の異常などがあります。
一つずつご説明していきます。
この中で一つ以上当てはまるのがあれば、膝蓋骨脱臼を起こす可能性があるため注意が必要です。
①Q角は大腿四頭筋が膝蓋骨を外側に引っ張る角度で、この角度が大きいほど脱臼する可能性が高くなります。
Q角の詳細についてはこちらでご紹介しています。
Q角がわからない方はこちらをご覧ください。→Q角の詳細についてはこちら。
②膝蓋骨が高い位置にあるということは、大腿四頭筋が過緊張状態になっているということです。
③膝蓋骨の外側の支持組織の過緊張とは、膝蓋骨の外側につく外側広筋や靭帯が硬くなっている状態で外側に膝蓋骨が引っ張られやすい状態のことです。
④内側広筋の機能不全は、膝蓋骨は内側につく内側広筋により内側へ引っ張られるため、内側広筋がうまく機能しないと外側に引っ張られてしまいます。
⑤外反膝については、外反膝は膝が内側にある状態でQ角が大きくなりやすい状態でもあります。
そのため外側に膝蓋骨が引っ張られやすくなります。
⑥膝蓋骨の形の異常については、膝蓋骨は脱臼しづらい方になっていますが産まれつき形に異常があると脱臼をしやすくなることがあります。
①〜④に関して解剖学的要素のため、リハビリ次第で緩和することは可能です。
⑤に関しては、リハビリで緩和できる部分もありますが、先天的の場合は難しいです。
⑥に関しては、先天的であることが多くリハビリでの改善はできません。
膝蓋骨脱臼の予防方法とは?
膝蓋骨脱臼を予防するためには、①〜④のQ角増加、膝蓋骨の高い位置、膝蓋骨の外側の支持組織の過緊張、内側広筋の機能不全の改善を目的にトレーニングをしましょう。
①Q角の増加、③膝蓋骨の外側支持組織の過緊張、④内側広筋の機能不全についてのトレーニングについてご紹介します。
Q角を減少させるには、外側支持組織である外側広筋の過緊張を柔らかくする必要があります。
これに加え、膝蓋骨を内側から安定させる内側広筋のトレーニングも合わせて行うとさらに効果的です。
膝関節が外反位になるのを防ぐために、中殿筋や股関節外旋筋のトレーニングを行います。
股関節が内股になると外反しやすくなります。
そのため股関節外転と外旋筋をトレーニングし内股になるのを防ぎます。
中殿筋はこのように行います。
外旋筋はこのように行います。
詳しいトレーニング方法についてはこちらでご紹介しています。
トレーニング方法を確認したい方は、こちらを参考にしてください。
膝蓋骨脱臼の手術方法とは?
手術についてご紹介します。
先ほどご紹介したように、膝蓋骨の外側移動を制動する靭帯は内側膝蓋大腿靭帯です。
また膝蓋骨外側脱臼の受傷時に内側膝蓋大腿靭帯は96%の割合で損傷しているため、ほとんどの方は内側膝蓋大腿靭帯を損傷してしまいます。
そのため、手術療法として最近は内側膝蓋大腿靭帯の再建術を行うのが主流です。
再建靭帯には人工靭帯や半腱様筋を用いて行います。
関節鏡で行い、再建靭帯を大腿骨と脛骨に固定します。
手術後のリハビリとは?
手術後のリハビリの進め方についてご紹介します。
リハビリの進め方は各施設により異なりますが、早い段階から関節を動かしたり、体重をかけての歩行練習など再建靭帯に負担がかからないように行っていきます。
手術後のリハビリは膝蓋骨が外側へ行かないような膝にすることが重要です。
トレーニング方法は先ほど膝蓋骨脱臼の予防で紹介した内側広筋や中殿筋、外旋筋トレーニングと同じように行いましょう。
まずは膝蓋骨を内側へ引っ張る内側広筋に力をつけることと、膝が内側に入りづらい体作りが大切です。
手術後3ヶ月程度は膝蓋骨が外側にいくのを防ぐためにサポーターをつけます。
手術後6ヶ月程度からジョギングや軽いスポーツを徐々に再開し、筋力が十分についてから競技復帰となります。
まとめ
膝蓋骨脱臼は外側にすることが多いです。
特に思春期の女子に多くみられます。
受傷場面として、スポーツ時や歩いていて急に後ろを振り向いた時に起こります。
一度脱臼をすると20〜50%の確率で脱臼を繰り返しやすくなるため注意が必要です。
膝蓋骨脱臼の原因として、先天的な要素や体の構造的な解剖学的要素があります。
膝蓋骨脱臼を予防するためには、Q角増加、膝蓋骨の高い位置、膝蓋骨の外側の支持組織の過緊張、内側広筋の機能不全の改善を目的にトレーニングを行います。
膝蓋骨の外側移動を制動する靭帯として内側膝蓋大腿靭帯や筋肉では内側広筋が重要です。
膝蓋骨脱臼の治療法として手術療法があり、内側膝蓋大腿靭帯の再建術が第一選択として行われています。
手術後はリハビリを行い術後6ヶ月程度から軽い運動を開始し、筋肉が十分についてきてから競技復帰となります。
膝蓋骨脱臼を一度すると脱臼がクセになってしまいます。
そうならないためにも、膝周りの筋肉はしっかりとトレーニングしておきましょう!
参考・引用文献
1)野村栄貴:反復性膝蓋骨脱臼.整形看護外科17(8):773-777, 2012.
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