今から10年後の2025年に一気に高齢者が増えることをご存知でしょうか?
2025年に『団塊の世代(だんかのせだい)』が75歳以上になるため、これからの日本にとって大な課題の一つです。
2025年に向け国の秘策として『地域包括ケアシステム』の準備を進めています。
今後の日本の高齢者人口とは?
日本の高齢者は2025年に一気に増えると言われています。
それは第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)〜1949年(昭和24)の起こった第一次ベビーブーム世代に生まれた方が一気に高齢者になるためです。
この方々を『団塊(だんかい)の世代』と呼んでいます。
団塊の世代という言葉をニュース等で一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
昭和22〜24年に生まれた方は700〜800万人といわれています。
2010年現在の日本の総人口はおよそ1億2700万人、75歳以上の方は1422万人で全体の11.2%になります。
これが2025年になると総人口が1億1927万人と減るのに対し、75歳以上は2167万人と増加し全体の18.2%になります。
75歳以上の割合:11.2%(2010年) → 18.2%(2025年)
これは何を意味しているかというと、若者一人あたりの高齢者を支える負担の増加、医療費の増加、医療機関の不足などさまざまな問題が予想されます。
若者一人の負担をイラストでご紹介します。
出典:厚生労働省 今後の高齢者人口の見通し
下は若者で上は高齢者になります。
2012年は若者数人で一人の高齢者を支えておりこれを騎馬戦型といいます。
今後、高齢者数が増えていくと2050年には若者一人で高齢者を一人支えるという肩車式の世の中になってしまうと予測されています。
胴上げ型(1965年)高齢者1人に対し支える人口9.1人 騎馬戦型(2012年)高齢者1人に対し支える人口2.4 肩車型(2050年)高齢者1人に対し支える人口1.0人
これに加え看取り先の確保も困難となっています。
2010年の死亡者数は1192千人に対し、2030年の推計死亡者数は1597千人になります。
どのくらい増えたかといいますと、2010年から2030年で40万5千人も増えることになります。
2030年の推測看取り場所は、医療機関で約89万人、介護施設で約9万人、自宅で約20万人、その他で47万人となっています。
今後、医療機関や病床数の増加は期待できないため、その他の47万の看取り先をどうするのかがポイントになります。
これに対し国が打ち出しているのが、自宅で看取りをできる環境を整えるということです。
そのためには最期まで住める住居を確保しなくてはなりません。
そのためには、できるだけ医療や介護が必要でない高齢者を増やすことが必要です。
また医療や介護が必要になったとしても、効果的なサービスを少ない人材で効率よく提供することが重要になります。
これらの問題の改善案として出されたのが地域包括ケアシステムです。
地域包括ケアシステムとは?
地域包括ケアシステムについて、厚生労働省のHPにはこのように記載されています。
2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進
簡単にすると、地域の包括的な支援やサービス提供体制(地域包括ケアシステム)を利用し、可能な限り住み慣れた在宅で暮らせるようにするということです。
在宅で安全に暮らしが行えるように、医療や介護、福祉サービスなどさまざまな生活支援サービスを生活の場で適切に利用できるように体制を整え、在宅生活の限界点をできる限り高めることが重要となります。
地域包括ケアシステムには5つの構成要素があります。
それは住まい・医療・介護・予防・生活支援 の5つです。
これらの関係を図にしたのがこちらになります。
出典:平成25年3月 地域包括ケア研究会報告 「地域包括ケアシステムの構築における今後の検討のための論点」
地域における生活の基盤:「住まい」→ 植木鉢 「生活支援」→ 土
専門的なサービス:「医療」「介護」「予防」→ 植物
このように捉えてみましょう。
ここでいう生活支援とは住民同士の支え合いという意味も含まれています。
高齢者のプライバシーと尊厳が十分に守られた「住まい」が提供され、その住まいにお いて安定した日常生活を送るための「生活支援・福祉サーヒビス」があることが基本的な要素 となります。そのような養分を含んだ土があればこそ初めて、専門職による「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・予防」が効果的な役目を果たすものだと考えられます。
鉢の下にひいてある皿には、本人・家族の選択と心構えと書かれています。
本人・家族の選択と心構えについてご説明します。
従来は家に家族がいる→急変時に救急車で搬送→病院でなくなるという流れで最期を迎えます。
しかし高齢者が増えていくことや、生活が在宅へシフトしていくため、今後はこれが変わることを理解しておかなければなりません。
一人暮らし → 毎日誰かが訪問して様子を見ている → 翌日になったら一人で亡くなっていた。
このような最期の迎え方もめずらしくなくなるでしょう。
家族に見守られながら自宅でなくなるわけではないことを、住民が理解する必要があります。
理解した上で在宅生活を選択する必要があるということです。
地域包括ケアシステムの姿とは?
実現を目指すために地域包括ケアシステムの姿とはどのようなものなのでしょうか。
イラストではこのようになっています。
出典:厚生労働省 地域包括ケアシステムより
以下の7つの項目があげられます。
①住民主体の組織の活用、介護保険制度の役割
②自立支援型マネジメントの徹底
③医療との連携
④介護予防、軽度者
⑤在宅サービスの充実
⑥高齢者住宅の整備確保
⑦施設の有効利用
では一つずつご紹介していきましょう。
【①住民主体の組織の活用、介護保険制度の役割】
高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるように、住民主体のさまざまな活動体が活動の中核(中心)を担っています。(住民主体:自治会やNPOなど)
地域包括支援センターが住民主体の組織運営の支援、システム化に取り組んでいます。
【②自立支援型マネジメントの徹底】
ケアプランは達成目標を設定し作成されます。
ケアプランとはケアマネージャーが作成するプランになります。
ケアマネージャーとは介護支援専門員のことで、主に介護に関するコーディネートをする人です。
この達成目標とは、要介護状態の改善や悪化防止のために設定されます。
この達成目標に向けてサービスを提供していきます。
【③医療との連携】
入院医療で十分な治療やリハビリを提供します。
その後、在宅支援が必要な場合は退院時に話し合いを設け、担当介護支援専門員(ケアマネージャー)へ情報を伝え情報共有します。
【④介護予防、軽度者】
軽度者には生活の動作が向上するように通所や訪問リハビリが介護保険で提供されます。
この他の家事援助などは住民主体(自治会やNPOなど)となり提供されます。
【⑤在宅サービスの充実】
24時間365日対応の短時間巡回型の訪問サービスが中心になっています。
これは特に看護職と介護職が地域を巡回します。
【⑥高齢者住宅の整備確保】
住み続けることができる住宅が整備されます。
【⑦施設の有効利用】
生活期のリハビリを集中的に行うために、住まいと病院の間にリハビリスタッフが重点的に配置された施設が整備されます。
まとめ
2025年に段階の世代が高齢者となり、日本の高齢者人口は一気に増加します。
それに対応するために出来上がったのが地域包括ケアシステムです。
従来の高齢者は病院や施設中心の医療や介護でしたが、今後は在宅中心の医療や介護へシフトしていきます。
そのため地域と密着することが重要になります。
住み慣れた地域で暮らせるように、生活機能の向上は介護保険を利用し生活の支援は住民主体の提供と変わっていきます。
これから急速に高齢化になっていくため、地域包括ケアシステムは必ず知っておいた情報です。
頭の片隅に置いとくといいと思います!
参考文献
1)平成21年度老人保健健康増進等事業における地域包括ケア研究会の報告書
2)平成25年度老人保健健康増進等事業における地域包括ケア研究会の報告書
3)厚生労働省ホームページより
地域包括ケアシステムの小規模他機能居宅は市が違えば利用できず、隣の市の近の居住者は、遠くの施設を利用しなければならない。住み慣れた場所でと言ってるが実際は違う。市の区切りが利用をさまたげる。