記事内に広告を含みます

FAIと股関節唇損傷の関係とは? FAIの詳細や手術、リハビリについてご紹介!

FAIという股関節の病態を聞いたことはありますか?

近年、注目されている股関節の病態の一つです。

FAIは関節唇損傷や軟骨損傷を引き起こし、最終的に変形性股関節症になることがあります。

 

今回はFAIや関節唇損傷との関係FAIの詳細や手術リハビリについてご紹介します。

rp_098887-300x205.jpg

FAIとは?

 

FAIはここ十数年で注目されている病態です。

 

FAIとはfemoroacetabular impingentの略で、股関節で起こるインピンジメント(挟み込み)のことです。

 

F:femoro(大腿骨) A:acetabular(寛骨臼) I:impingent(挟み込み)

 

患者さんの主訴として股関節前方部痛や鼠径部痛を訴えることが多いです。

 

またFAIの特徴的な症状として、乗用車の乗り降りや足を組む際に、瞬間的な痛みが起こります。

 

慢性化した場合は、夜間痛や股関節動きが硬くなり、変形性股関節症に似た症状を伴うことがあります。

 

このような症状が見られた際は、一度整形外科を受診することをお勧めします。

 

FAIの病態とは?

 

FAIは股関節で起こるインピンジメントのことで、寛骨臼と大腿骨頸部の形態異常により、繰り返し臼蓋縁と大腿骨頸部が衝突することで関節唇や関節軟骨が損傷を起こします。

 

寛骨臼や大腿骨をイラストでみてみましょう。

 

股関節

 

寛骨臼

 

 大腿骨

 

股関節の解剖学についてはこちらでご紹介しています。

ご興味がある方はご覧ください。→股関節で重要な解剖学はこちら

 

関節唇は臼蓋とくっついており、大腿骨頭との接地面積を広げるとても重要な組織です。

 

浅い臼蓋を広くし、臼蓋と大腿骨頭を安定させる役割をします。

 

関節唇

 

関節唇についてはこちらで詳しくご紹介しています。

 

ご興味がある方は、こちらをご覧ください。→関節唇についてはこちら。

 

FAIの分類とは?

 

FAIは3つのタイプに分類されています。

 

pincer type(ピンサー型)とCAM type(カム型)とmixed typeに分類されます。

 

pincer typeは臼蓋側に原因があり、CAM typeは大腿骨頭側に原因があります。

 

mixed typeは両方を合わせ持つタイプです。

 

タイプの多い順番は①CAM type ②mixed type ③pincer typeの順です。

FAI分類 引用1)

それでは一つずつご説明していきます。

 

《pincer type》

まずpincer typeについてです。

 

pincerとはカニやエビのはさみ意味しています。

 

臼蓋にカニのはさみのように骨棘や形態異常があると、過剰に大腿骨頭を覆うためインピンジメント(挟み込み)が起こります。

 pincer type

引用2)

このインピンジメントが繰り返されることで関節唇や関節軟骨に損傷が起こります。

 

pincer typeは30〜40歳代の女性にみられることが多いです。

 

損傷部位として臼蓋前上方の関節唇の損傷が多く、5mmに満たない幅の関節軟骨損傷が多く認められます。

 

 《CAM type》

次にCAM typeについてです。

 

CAM typeは大腿骨側に原因があります。

 

これは大腿骨頭すべり症やペルテス病など、骨頭が変形した場合に起こります。

 

大腿骨頭から頸部の間に生じた骨隆起(骨の出っ張り)がCAMとして関節唇にぶつかり、関節唇の剥離(はくり)が起こります。

 CAM type

引用2)

 

普通は頸部の部分にくぼみがありますが、この部分が出っ張ったり骨頭が変形することで起こります。

 

CAM typeは20~30 歳代の男性に多くみられます。

 

《mixed type》 

mixed typeはpincer typeとCAM typeの両方が合わさったものです。

 mixed tyape

 

インピンジメントが繰り返し起こることで、関節唇損傷や軟骨損傷につながります。

 

さらにこれが続くと変形性股関節症になってしまう恐れがあります。

 

変形性股関節症とは、関節の臼蓋や大腿骨頭が変形し痛みが出現する病気です。

特に50〜60歳代の女性におおいです。 

 

変形性股関節症はこちらで詳しくご紹介しています。

ご興味がある方はご覧ください。→変形性股関節症についてはこちら

 

FAIの診断とは?

 

FAIの診断は臨床診断と画像診断で行われます。

 

臨床診断とは実際に患者さん足を動かしてみてテストを行います。

 

よく使うテストをご紹介します。

Anterior impingement testといい、股関節を曲げて内側にひねるテストです。

テスト引用2) 

 

やり方についてご説明します。

 

まず患者さんを仰向けに寝かせます。

 

次に股関節を90°屈曲させます。(曲げます)

 

この状態で股関節を内旋させます(内側にひねります)

足を内側にひねる=踵を外側に動かす ということです。

 

この時に痛みを伴うとテスト陽性となり、FAIの可能性があります。

 

次に画像診断についてです。

 

画像ではFAIに特徴的な骨性変化を見ることが大切です。

 

これはレントゲン写真でみることが多いです。

 

関節唇や軟骨損傷についてはレントゲンでみることは難しいため、MRIやMRA(日本では保険適応外)で検査を行います。

 

FAIの手術療法とは?

 

最近のFAIの手術は股関節鏡視下手術が主流になってきています。

 

手術適応とは? 

 

まず手術適応についてです。

①股関節痛や股関節の動きの制限が日常生活(趣味や仕事も含む)に支障を及ぼす場合

 

②臨床所見で股関節屈曲・内旋・内転で鼠径部に痛み出現する場合。

 Anterior impingement testが陽性

 

③3ヶ月程度、保存療法で行い症状が改善しない場合

 

④CAM typeでは大腿骨頭と頸部の間に骨の出っ張りを認めるもの。

 pincer typeでは深い臼蓋を認めるもの。

 

このようなことが手術適応基準となります。

 

手術方法は主に股関節鏡視下手術を行うことが多いです。

 

股関節鏡視下手術とは?

 

簡単に手術のご説明をします。

 

手術で切るのは2カ所で場合によっては3カ所です。

大きさとしては約1㎝程度です。

 

そこから関節鏡を入れ手術を行います。

 

臼蓋側の骨棘を切除し、大腿骨頭から頸部の骨隆起(出っ張り)を切除します。

 

その後、関節唇を縫って手術終了となります。

 

手術後のリハビリとは?

 

手術後は早期より理学療法を行います。

 

荷重に関しては制限がかかり、体重の一部分(1/4や1/3)など荷重量を減らした状態から歩行練習が開始となります。

 

関節唇の縫合や骨隆起の切除等、個々の手術の行い方で進め方が変わってきますが、およそ1〜2ヶ月程度で全体重をかけることができます。

 

関節可動域練習に関しては早期から行っていきます。

 

競技にはおよそ4〜5ヶ月頃から徐々に参加していきます。

股関節の状態にもよりますが、6ヶ月以降に完全復帰となります。

 

簡単なトレーニング方法とは?

 

一つ簡単なトレーニング方法をご紹介します。

 

FAIの手術後は股関節を安定させることが非常に重要です。

 

股関節を安定させるには股関節の外旋筋が重要になります。

 

股関節外旋筋の解剖学についてはこちらでご紹介しています。

ご興味がある方はご覧ください。→股関節外旋筋についてはこちら。

 

手術後のため股関節外旋筋に足し、低負荷でトレーニングを行う必要があります。

 

方法としてはこのように足を内・外側にコロコロさせましょう。

 

IMG_3819

 

IMG_3822

 

 IMG_3820

 

まとめ

 

FAIとはfemoroacetabular impingentの略で、股関節で起こるインピンジメント(挟み込み)のことです。

 

FAIの特徴的な症状として、乗用車の乗り降りや足を組む際に、瞬間的な痛みが起こります。

 

FAIはpincer type(ピンサー型)とCAM(カム型) typeとmixed typeに分類されます。

 

インピンジメントが繰り返し起こることで、関節唇損傷や軟骨損傷につながります。

 

さらにこれが続くと変形性股関節症になってしまう恐れがあります。

 

FAIの手術は股関節鏡視下手術が主流になってきています。

手術内容として、骨棘を取り関節唇を縫合します。

 

競技復帰はおよそ6ヶ月以降となります。

 

FAIは最近注目されており、またFAIの手術も増えてきています。

 

もし股関節の前側や鼠径部に痛みがある場合は、一度整形外科を受診することをお勧めします。

 

参考・引用文献

1)和田孝彦ら:FAI(femoroacetabular impingement)とは.臨床スポーツ医学29(4).367-371, 2012.

2)福島健介ら:FAIの病態と診断-我が国における頻度を含めて-.関節外科.30(9).1017-1022, 2011.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です