大腿骨転子部骨折は大腿骨頸部骨折に並び高齢者に非常に多い骨折の一つです。
高齢者にとって大腿骨の骨折は今後の生活に大きく関わる非常に重要な骨折です。
今回は大腿骨転子部骨折の手術やリハビリ、回復の程度、生活での注意点についてご紹介します。
大腿骨転子部骨折とは?
大腿骨転子部骨折は高齢者に非常に多い骨折の一つです。
まず大腿骨転子部の解剖の復習をしましょう。
大腿骨はこのようになっています。
転子部は外側に出って張っている部分です。
転子部は実際に触ることができます。
足の付け根を外側から触った時に、出っ張っている部分が一箇所あります。
ここが転子部です。
わかりづらい場合は足を内側と外側にひねってみましょう。
ひねりに合わせて出っ張っている部分が動けば、それは大腿骨の転子部になります。
大腿骨の解剖については詳しくこちらでご紹介しています。
ご興味がある方はご覧ください。→股関節のついてはこちらから。
この大腿骨の転子部が骨折することを大腿骨転子部骨折といいます。
特に70歳以上に多く起こる骨折で、原因として転倒により骨折することがほとんどです。
転倒場所として大腿骨頸部骨折と同じで、自宅内で転倒し骨折するケースが多いです。
転倒場所は階段や玄関の上がり框(かまち)より、座布団やこたつの電気の線、カーペットの端、敷居につまずくことが多いです。
階段の方が転びそうな感じがしませんか?
実は階段や玄関の上がり框は高さがあるため、目で見て注意をします。
しかしカーペットの端や敷居は高さが1㎝もありません。
そのため階段などに比べ注意力が減りつま先が引っかかって転びます。
これに加え普段生活している環境のため安心しきっていることも転ぶ原因の一つです。
多くの方は高い段差で転ぶことが多いと思っていますが、実は低い段差の方が転ぶ可能性が高いです。
これは自宅の模様替えをする際にとても重要なポイントです。
大腿骨転子部骨折の治療とは
大腿骨転子部骨折の骨折タイプはEvansの分類を使用します。
引用1
group1,2は安定型骨折であり、group3,4とtypeⅡは不安定型です。
大腿骨転子部骨折の場合、基本的には手術療法となることが多いです。
手術方法としてCHS法やガンマネイル法があります。
左CHS法 右ガンマネイル法
引用2)
どちらも骨を固定する手術方法になります。
大腿骨転子部骨折の特徴として大腿骨頸部骨折の人工骨頭置換術とは違い股関節を新しいものに変えないため、手術後に脱臼することはありません。
手術療法のメリットとして、手術後早期から荷重をかけられるということです。
しかし骨折typeが不安定型で複雑に骨折をしている場合は、早期から荷重がかけられないケースもあります。
保存療法の場合、荷重練習や歩行練習は早期から行えず筋力や体力の低下が起こる可能性が非常に高いです。
特に高齢者の場合、体力が落ちやすく感染症や肺炎にかかるリスクが高いため、手術療法が選択され早期から歩行練習や運動を行い体力を落とさずにすることがとても重要です。
手術後のリハビリとは?
リハビリは手術の翌日から開始となります。
リハビリ初日はベッドの上で関節を動かす練習やベッドアップを行います。
痛みが少なければ座る練習も行います。
リハビリ二日目から車椅子に乗り、トイレの練習や立つ練習、リハビリ室に行きます。
リハビリ三日目あたりから痛みに合わせて歩行練習を徐々に開始していきます。
大腿骨転子部骨折の手術は人工骨頭置換術の手術と比べ、痛みが続く期間が長いです。
また人工関節ではなく、骨を固定しているため荷重時痛も見られることがあります。
痛みを減らす重要ポイントとしてアイシングをしっかりと行うことです。
大腿骨転子部骨折は痛みが続きやすいのに加え、腫れが引けるのが遅いです。
この炎症症状を抑えるための方法としてアイシングが一番効果的です。
アイシングはこのように作り患部を冷やしましょう。
特にリハビリの後は炎症症状が強くなるためしっかりと行えると効果的です。
効果的なアイシング方法をこちらでご紹介しています。
ご興味ある方はご覧ください。→効果的な炎症管理方法はこちらからどうぞ。
歩行練習が進んできたら生活動作の練習も行っていきます。
生活動作は主に段差昇降や浴槽跨ぎ動作等の日常生活でよく使う動作の練習を行います。
入院はおよそ1〜2ヶ月程度になります。
退院後にヘルパーやデイサービスなどのサービス、住宅改修を利用するためには介護保険が必要になります。
そのため介護保険をお持ちでないと受けることができません。
介護保険を新規で申請する場合、介護保険の認定が降りるまで約1ヶ月程度かかります。
そのためある程度退院の時期を予測し早い段階で介護保険の申請を行うようにしないと、退院時にサービスの利用ができず退院となってしまします。
介護保険の取得方法についてはこちらでご紹介しています。
ご興味がある方はご覧ください。
大腿骨転子部骨折の回復過程とは?
大腿骨転子部骨折は高齢者に多い骨折であり回復は他の疾患と比べるとやや遅いです。
そのため退院時に入院前の生活状態まで回復することは難しいです。
退院後に日常生活を送ることがリハビリとなり徐々に体力や動作が向上してきます。
歩行の獲得率については65〜84歳までの高齢者で75%、85歳以上で58%となります。
大腿骨の骨折は生命にも大きく関わっており、大腿骨転子部骨折の死亡率(頸部骨折も含む)は1年で9.8〜10.8%です。
これはずっとベットの上にいることで体力が落ち肺炎などにより起こります。
→大腿骨の骨折でリハビリ以外でも痛みを軽減さる簡単な自主トレをご紹介!
まとめ
大腿骨転子部骨折は高齢者に多い骨折の一つです。
大腿骨には転子部と頸部があり、転子部が骨折をすることを大腿骨転子部骨折といいます。
大腿骨転子部骨折は手術療法になることが多く、手術方法は骨を固定します。
手術のメリットとして早期から荷重をかけられたり、歩く練習が行えるようになります。
またベッドの上にいると筋力や体力の低下が起こるため、これを防ぐためにも手術療法が重要になります。
これから高齢者がどんどん増えそれに伴い増える骨折の一つであるため、覚えておくといいでしょう!
引用・参考文献
1)日下部虎夫:大腿骨転子部骨折.整形外科看護.10.2015
2)石渡和義:整形外科アトラス 大腿骨転子部骨折に対するネイルプレート.整形外科看護.10.2005
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