変形性股関節症は50〜60歳代の女性に多い疾患です。
症状として股関節が痛くて歩くことが大変な方が多いです。
変形性股関節症は股関節への負担を軽減することがとても重要です。
今回は変形性股関節症の詳細、関節への負担の軽減の仕方、痛みやトレーニング方法についてご紹介します。
変形性股関節症とは?
変形性股関節症とは、長い間繰り返される負担、ケガなどによって、骨が変形したり軟骨がすり減ったりすることで、痛みが生じたりする病気です。
症状として、動作時の股関節痛や関節の動きづらさなどがあります。
日本における変形性股関節症の方は120〜420万人いるとされ人口の1.0〜3.5%です。
50〜60歳代の中高年の女性に多いのが特徴です。
原因として、明らかな原因と特定できない一次性股関節症と、なんらかの原因を推定できる二次性股関節症とに分類されます。
一次性股関節症は外国人に多く、肥満や重労働などによって起こるとされています。
二次性股関節症は、乳児期の先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全症によるものが多いとされています。
しかし、乳児期の臼蓋形成不全は基本的に自然改善するのが通説です。
そうすると成人の臼蓋形成不全どのように成立するのかまだ謎が多いのが現状です。
変形性股関節症の病態や症状とは?
変形性股関節症は全身的な慢性進行性疾患です。
変形股関節症は関節の狭小化、骨棘の形成、関節の変形、骨嚢胞などが起こるのが特長です。
関節の狭小化とは、関節が狭まってしまうことです。
骨棘とは『こつきょく』といい、関節に負担がかかることで骨が尖ってしまうことです。
骨嚢胞とは『こつのうほう』とは、関節に穴が開いてしまうことです。
引用1)
このように変形性股関節症は徐々に症状が進行し、関節が変形していく病気です。
なぜ変形が進行するかというと、股関節の安定性が乏しく関節に負担がかかるためです。
症状として、歩行や動作時の股関節痛、関節の動きの制限、腰痛などがみられます。
なぜ腰痛になるか疑問を持たれる方もいるのではないでしょうか。
変形性股関節症の症状を軽減させるためにカラダでは股関節を安定させようとし働きます。
これにより腰に負担がかかり腰痛が出現します。
では、腰痛についてもう少し詳しくご説明します。
変形性股関節症は股関節の臼蓋が浅い状態です。
臼蓋(寛骨臼)とはこの部分です。
臼蓋は大腿骨頭と接地する部分です。
そのため臼蓋の部分が浅いと大腿骨頭と接地する面積が狭くなり、股関節が不安定になります。
このように臼蓋が浅くなってきてしまします。
この臼蓋の角度のことをCE角やSharp角といいます。
CE角やSharp角は臼蓋形成不全のレントゲン検査で用いられる方法です。
CE角やSharp角の正常角度や計測方法、詳細についてこちらでご紹介しています。
ご興味がある方は、こちらをご覧ください。
臼蓋が浅くなると大腿骨頭との安定性が悪くなります。
そのため腰をそって骨盤を前に倒すことで臼蓋と大腿骨頭との接地面積が大きくなるため、カラダがこのように反応します。
この反応が長年続くことで腰に痛みが生じてしまいます。
これの反応は決して悪いことでなはく、正常はカラダの反応です。
変形性股関節症の方は臼蓋が浅いというカラダの構造の弱点を、うまくカラダを使うことで補っています。
そのため無理にカラダの動き方を修正をする必要はありません。
しかし、ずっとカラダをそっていると腰の筋肉がかたくなたり、股関節の動きが悪くなります。
そのため骨盤を動かすエクササイズを行う必要があります。
方法の詳細はこの後にご紹介します。
変形性股関節症の歩き方とは?
変形性股関節症の方でよく見られる歩き方についてご紹介します。
このようにカラダを倒したり、骨盤を倒すことでうまく歩いています。
引用2) 左側:トレンデレンブルグ歩行 右側:デュシェンヌ歩行
この歩き方は股関節を支え安定させる中殿筋という筋肉が筋力低下することでみられます。
変形性股関節症の特徴として股関節の筋力が低下しやすく、特に中殿筋の筋力が低下している方が多いです。
中殿筋をイラストでご紹介します。
中殿筋は股関節を安定させる働きをし、股関節の中でベスト3に入る重要な筋肉です。
また先ほどご紹介したように、変形性股関節症の方は臼蓋が浅いというカラダの構造の弱点を、うまくカラダを使うことで補っています。
そのため股関節を安定させるために、カラダの重心をうまく移動させ歩かれているため、カラダを傾いたりすることもあります。
カラダの重心の位置が股関節の上にある方が関節への負担が減ります。
例えば、このように股関節の上に重心が来ると股関節への負担が少なくなります。
重心の位置や、どのような位置に重心があると股関節の負担がすくないのか、以前にご紹介してあります。
ご興味がある方はこちらをご覧ください。
歩き方は決してまっすぐキレイに歩くことが正しいということではありません。
人それぞれ関節の状態や筋肉のつき方、体重など全てが違います。
変形性股関節症の方も股関節に負担をかけないようにカラダがうまく補っているため、
正しい歩き方=まっすぐキレイな歩き方ではないということです。
変形性股関節症のエクササイズとは?
では変形性股関節症の方はどのようなエクササイズを行えばいいのでしょうか。
ポイントとしては、股関節への負担を減らすことがとても重要です。
まずは体重を減らすことが重要になります。
体重が少ない方が股関節への負担がかなり減ります。
体重を減らす方法として有酸素運動が効果的です。
有酸素運動は低い運動負荷で20分以上運動を行うことで効果が出ます。
オススメの有酸素運動として自転車こぎです。
自転車は股関節への負担が少なく、長い時間行えるため効果的といえます。
有酸素運動の効果や詳しい方法についてはこちらでご紹介しています。
ご興味がある方はご覧ください。
→②有酸素運動とレジスタンストレーニングについてはこちらから
次に関節の動きが硬くならないようにすることです。
先ほどご紹介したように、股関節を安定させるために腰をそって骨盤を前に倒す反応をカラダは起こします。
この状態が続くと、腰の筋肉が硬くなり痛みが生じたり、股関節と腰の動きが悪くなります。
そのためこのように腰をそったり丸めたりし、腰や股関節の動きが硬くならないようにすることが重要です。
ポイントとして、腰や骨盤が大きく動くように行いましょう。
この他に、変形性股関節症の方は股関節が開きにくくなったり、太ももの内股の筋肉が硬くなります。
あぐらをとるのが難しい方もいるのではないでしょうか?
太ももの内側の筋肉は内転筋といいます。
内転筋のストレッチ方法はこのように行います。
この方法は変形性股関節症の方にとって苦手な動作です。
そのため行うことが難しい場合は、無理に行わないようにしましょう。
また、このストレッチを行った際に内転筋が伸びている感じであれば実施し、もし股関節の付け根に痛みが出現した場合は実施を中止しましょう。
重要なのが、股関節に無理な負担をかけずに筋肉をストレッチするということです。
ストレッチを行うことが難しい場合は、このように内転筋をマッサージするだけでも効果はあります。
このように手で押しましょう。
内転筋のご紹介やストレッチ・マッサージ方法についてはこちらでご紹介しています。
ご興味がある方はこちらをご覧ください。
次に股関節の筋トレについてです。
股関節を安定させるには筋肉をつけることが重要です。
股関節を安定させる筋肉で重要なのが、中殿筋と外旋筋という筋肉です。
中殿筋は先ほどご紹介したので外旋筋をイラストでご紹介します。
外旋筋は六つあり、その中の一つである梨状筋です。
外旋筋は股関節の後ろ側にある小さい筋肉ですが、股関節を内側から安定させる重要な筋肉です。
中殿筋のトレーニング方法についてご紹介します。
中殿筋は足を外に開く働きをします。
方法としてこのように横向きになり足を開くように動かします。
この時にしっかりとお尻に力が入っていることを確認しながら行いましょう。
中殿筋の詳しいトレーニング方法はこちらでご紹介しています。
ご興味がある方はご覧ください。
次に外旋筋のトレーニング方法についてです。
外旋筋は足を外にひねりながら開く筋肉です。
方法として、上向きに寝た状態で両足を曲げ、足を外に開きます。
この時に、お尻に力が入っていることを確認しましょう。
他にも外旋筋のトレーニング方法や解剖学についてはこちらでご紹介しています。
ご興味がある方はご覧ください。
筋力トレーニング時の注意点として、股関節に痛みがある時は実施を控えましょう。
まとめ
変形性股関節症は50〜60歳代の中高年の女性に多いのが特徴です。
変形性股関節症は股関節が変形し軟骨が減ったり、骨棘ができることで痛みが出現します。
変形性股関節症で重要なことは股関節へ負担をかけないようになることです。
股関節への負担を減らすには、体重の減量、関節の動きが硬くならないようにすること、筋力をつけることです。
今回ご紹介したトレーニングを行ってみましょう。
トレーニング実施時の注意点として、股関節に痛みが生じた時は実施を控えてください。
痛いのをガマンして無理に続けると、股関節に負担をかけてしまうので注意が必要です。
無理せずできる範囲でトレーニングを行い、股関節への負担の少ないカラダ作りをしましょう!
参考・引用文献
1)立岩俊之ら:第10回 変形性股関節症.整形外科看護15(11).1189-1193, 2010
2)月城慶一ら:観察による歩行分析.医学書院. 2005
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