変形性膝関節症は女性に多い疾患の一つです。
今回は変形性膝関節症の原因や症状、治療やリハビリ、ロコモシンドロームとの関係についてご説明します。
変形性膝関節症は膝が変形し軟骨がすり減ってしまうことで、膝に痛みが生じる疾患です。
これは65歳以上の人に多く、高齢化社会を迎えた現在の日本では膝疾患のうちで最も多い疾患です。
変形性膝関節症とは?
変形性関節症とは関節の軟骨がすり減ったり、加齢とともに関節が変形しすることで生じます。
日本には膝に痛みを訴える人は820万人います。
ちなみに日本の人口は1億2689万人(H26)
計算すると…日本人の15人に1人は膝に痛みを抱えています。
さらにこれを65歳以上の高齢者でみてみましょう。
65歳以上の人口は3296万人(H26)
計算すると…65歳以上の高齢は4人に1人の割合で膝に痛みを抱えています。
またレントゲン画像上で膝に変形がある人は2400万人に及ぶとされています。
日本の人口で計算すると、5.3人に1人の割合で膝のレントゲン上で変形が見られることになります。
このことからも非常に変形性膝関節症は身近な疾患であることがわかります。
変形性膝関節症の特徴は、女性に多く、男女比は1:4となっています。
また変形性膝関節症には種類があり、一次性と二次性に分けられます。
一次性と二次性の原因とは?
一次性とは原因がはっきりしていないものを指します。
一字姓は、年齢や肥満などのさまざまなことが重なり、その結果、変形性膝関節症に至ります。
二次性とは、何か原因がありそれに関連して発症することです。
二次性は、もともと骨折や半月板損傷などを生じたことがあり、それによって変形性膝関節症に至ってしまったことです。
変形性膝関節症の原因には一次性と二次性がありますが、約9割は一次性変形性膝関節症となります。
変形性膝関節症の症状とは?
膝の内側または外側が痛い
膝に水がたまる
歩き始めが痛い
階段が痛い
立って仕事をしていると痛い
膝がO脚またはX脚
歩いていて膝が外側に動揺する など
変形性膝関節症の方からは、このような症状が聞かれることが多くあります。
膝に痛みが出る場所としてこの部分が多いです。
痛みは、関節のつなぎ目やお皿の部分にみられることがほとんどです。
関節の間には軟骨がありますが、軟骨がすり減り骨と骨がぶつかることが痛みが生じます。
イラストでみるとこの部分になります。
変形性膝関節症の診断とは?
患者さんから症状を聞いたり、レントゲン検査や血液検査などの結果を踏まえて診断がつきます。
レントゲンでは骨棘の形成、関節裂隙、関節の変形具合などをみて判断します。
骨棘(こつきょく):骨の出っ張りのことで、正常ではなめらかな骨がボコボロしてしまします。
関節裂隙の狭小化:関節裂隙とは関節と関節の間のところで、軟骨がすり減っていると狭く狭小化しています。
変形具合:変形の具合は角度や関節の状態をみて判断します。
膝の角度はFTAという角度を測ります。
FTAの正常は175前後で、内反変形(O脚)の場合にこの角度が180°以上となります。
詳しい測定方法はこちらでご紹介していますので、ご興味がある方はご覧ください。
→FTAの詳細や計測方法はこちら。
膝の角度以外にも、変形の度合い表した分類があります。
一般的によく用いられている重症度分類はKellgren-Lawrence分類です。
Grade1:関節裂隙の狭小化を伴わず、わずかな骨棘形成。または軟骨下骨硬化を認める
Grade2:関節裂隙の狭小化(25%以下)を認めるが骨変化はない
Grade3:関節裂隙の狭小化(50~75%)と骨棘形成,骨硬化像
Grade4:骨変化が著しく,関節裂隙の狭小化(75%以上)を伴う
変形性膝関節症の治療とは?
治療は保存療法と手術療法があります。
保存療法の場合、痛み止めの薬を服用したり、膝にヒアルロン酸を注射したりします。
また理学療法も合わせて行い、膝に痛みが生じている原因を分析し、その原因を解決するようなエクササイズなどを行います。
手術療法は主に人工膝関節全置換術を行うことが多いです。
人工膝関節全置換術はTotal Knee Arthroplastyといい、TKAとも言われます。
このように人工の関節に入れ替えます。
引用)1
手術をするケースとして、先程ご紹介した分類のGrade3以上が適応となることが多いです。
しかし、Gradeが高くても手術を希望されなければ行わない場合もあります。
手術を行わない場合は、外来リハビリ等を行い痛みの軽減や悪化の予防を目的に行います。
一度変形を関節を元に戻すことはできないため、リハビリを行ったからといって関節が治るわけではありませんが、理学療法で膝への負担を減らし痛みを軽減させることができる可能性は十分あります。
膝の軟骨と痛みの関係とは?
変形性膝関節症は軟骨がすり減って痛みが生じる疾患です。
よく軟骨は元に戻るんですか?と聞かれることがありますが、実際は軟骨が戻ることは難しいのが現状です。
軟骨の再生を促す手術はありますが、変形性膝関節症の方へは不適合なのが現状です。
軟骨は再生能力が乏しい組織であり、色々なサプリなどを飲んだからといって昔のような軟骨に戻ることは難しいのが事実です。
そのため放っておいても痛みは軽減しません。
痛みを取り除くためには、リハビリで膝の内側に負担をかけないような体づくりを行ったり、人工膝関節全置換術をして膝自体を変えることが必要となります。
膝に痛みが生じて大変な方は、一度整形外科を受診し、しっかりと治療を行ったほうがよいでしょう。
変形性膝関節症とロコモとの関係とは?
変形性膝関節症は非常に多い疾患であり、またロコモティブシンドロームと密接に関係しています。
よくテレビなどで“ロコモ”と耳にすることがあるのではないでしょうか?
ロコモとはロコモティブシンドロームの略です。
ロコモは骨・筋・関節・神経などで構成される運動器が原因で移動機能が低下した状態を指します。
ロコモは体の悪循環によって起こることで多いです。
その例をご紹介します。
変形性膝関節症の人は、歩くと膝に痛みが生じることが多く、痛みが強い方は動くのが嫌ですよね。
痛くて動かなくなることで、体力が落ち、筋力も落ちます。
体力や筋肉が落ちた状態で、たまに動くと余計に膝が痛くなり動くことが嫌になります。
このように膝に痛みがあることで活動量が低下し、さらに痛みが生じるというとても悪循環な状態に陥ってしまいます。
め変形性膝関節症とロコモは密接に関わっているため、膝に痛みが生じたら放おっておかずに、しっかりと治療を行い、活動量を落とさないことがポイントです。
まとめ
今回は変形性膝関節症についてご紹介してきました。
変形性膝関節症はとても多い疾患で、私達の身近にある膝痛です。
変形性膝関節症はロコモシンドロームとも密接な関係があり、活動量を落としてしまう要注意疾患一つです。
膝に痛み生じたら我慢せず、まずは整形外科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
参考・引用文献
1)千田益生:変形性膝関節症.JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION21(12):1154-1159, 2012.
2) 王寺享弘:手術見学! 人工膝関節全置換術.整形外科看護20(1): 26-34, 2015.
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