膝の前十字靱帯損傷(ACL損傷)は、サッカーやラグビー、バスケットなどスポーツで起こるケガです。
スポーツをするヒトは必ず覚えておく必要があるケガの一つです。
今回は前十字靭帯損傷に対する手術の方法やリハビリの流れについてご紹介いたします。
前十字靭帯損傷(ACL損傷)は、ジャンプの着地や切り返し動作などで起こります。
着地や切り返し動作で踏ん張ったときに、膝が『くの字』のように内側に入ることがありますが、この状態は膝に負担がかかりやすくケガをしやすい状態です。
前十字靱帯の機能を確認してから、手術についてご紹介しましょう。
前十字靭帯の機能とは?
前十字靱帯は膝関節の中にある靱帯で、膝を安定させるためにとても重要な働きをします。
前十字靭帯は大腿骨の後側から脛骨の前側に向かってついています。
①脛骨の大腿骨に対する前方移動の制動
②脛骨の内旋の制動
③過伸展を制御
大腿骨と脛骨を安定させている前十字靭帯が損傷してしまうと、歩いていたり階段を昇り降りしているときに膝折れが起こる事があります。
膝折れとは、膝がガクっと抜けるような症状です。
この状態でスポーツをするとさらに膝に負担がかかり、水が溜まったり痛みが増加したりと悪化してしまいます。
前十字靭帯損傷の手術とは
前十字靭帯損傷に対する手術は、前十字靭帯再建術を行います。
前十字靭帯再建術は、体の一部から腱を取り前十字靭帯の変わりに腱を靱帯として新しくつなげる手術になります。
手術は関節鏡で行われることがほとんどのため、比較的傷は小さいです。
新しい靱帯として腱を使いますが、一つは膝蓋腱を使う方法、もう一つは半腱様筋(はんけんようきん)や薄筋(はっきん)を使う方法の2パターンが多く行われています。
今回は半腱様筋や薄筋を使った手術をご紹介しましょう。
まずは半腱様筋や薄筋を確認しましょう。
太ももの後側にある筋肉で、半腱様筋は膝を曲げる筋肉、薄筋は足を閉じる筋肉です。
この筋肉の腱の一部を取って、新しい靱帯として使います。
新しい靱帯を大腿骨と脛骨につけ、膝関節を安定させる手術になります。
手術後の注意点とは?
手術後に一番注意しなければならないのが再断裂です。
腱を使って新しく靱帯を作ったからといって、すぐに膝が安定するわけではありません。
手術後しばらくは新しい靱帯が安定するまで再断裂する可能性があります。
そのため手術後はDONJOYという装具をつけます。
この装具は膝の曲げたり伸ばしたりする関節の可動域範囲を調整することができます。
装具はおよそ3ヶ月程度つけています。
この間は、基本的にリハビリ以外は着用します。
手術後の3〜6週は新しい靱帯はとくに弱くなる時期であるため、特に再断裂に注意しなければなりません。
これは非常に重要な部分であるため、覚えておきましょう。
リハビリの進め方とは?
それでは前十字靭帯の手術後のリハビリについてご紹介します。
リハビリは手術後翌日より開始となります。
以前は手術してから1週間程度はシーネで固定し、そのあとは少しずつ体重をかけていくのが主流でした。
しかし現在は手術方法も変わり、手術の翌日から体重をかけたり関節を動かしたりすることが可能となり、リハビリの進行もかなり早くなってきています。
入院中はまず炎症管理をしっかりすることが大切です。
手術後は、腫れたり熱を持ったりします。
膝に炎症があると関節がスムーズに動かなかったり、筋力が低下してしまいます。
入院中の関節の動きの目標として、曲げる方は120°、伸ばす方は0〜−5°を目標とします。
また炎症の状態に合わせ、早い段階からスクワットなど筋力強化も行っていきます。
スポーツ復帰はおよそ9ヶ月程度です。
しかし膝の靱帯の状態や筋力の状態、膝に負担のかからない動作が獲得していれば復帰時期は早くなることもあったり、逆に回復が遅れていれば復帰も遅くなります。
スポーツ復帰に関しては主治医とよく相談しましょう。
まとめ
前十字靭帯損傷はスポーツで起こる靭帯損傷の一つです。
前十字靭帯は膝を安定させるためにとても重要な靱帯で、損傷すると膝折れなどの症状が生じます。
前十字靭帯損傷に対する手術は、関節鏡での再建術が多く行われています。
手術後のリハビリは手術翌日より開始となり、スポーツ復帰はおよそ9ヶ月ぐらいになります。
前十字靭帯損傷はスポーツをする上で知っておくべきケガの一つであるため、頭の片隅に入れておきましょうね。
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