記事内に広告を含みます

アキレス腱断裂の治療や手術〜理学療法士がアキレス腱断裂診療ガイドラインをわかりやすくご紹介〜

アキレス腱断裂の治療や手術などをアキレス腱断裂診療ガイドラインをもとに、一般の方がわかるように理学療法士の私が体験談も含めご紹介します。
ガイドラインには、アキレス腱断裂の病態や要因、治療、予後などが書かれているため、アキレス腱断裂のことを詳しく知ることができます。

 

 

診療ガイドラインは根拠のある内容が載っており、医師や私のような理学療法士もガイドラインを参考に治療を行います。

 

それでは詳しくご紹介していきます。

 

医療用語の解説

まず、診療ガイドライン、Gradeについて簡単ご紹介します。

すでに知っている方は、飛ばして読んでいただいても構いません。

 

診療ガイドラインとは

診療ガイドラインと聞いても難しいですよね。

 

診療ガイドラインは、

診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書。
(福井次矢・山口直人監修『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』医学書院.2014.3頁)

このように定義されています。

 

簡単に言うと、

 

✓さまざまな研究などによって根拠のある治療などが載っている。

✓患者と医療者で治療方針を決定するための材料となる

 

診療ガイドラインを参考に治療などを行ったりしますが、全てが当てはまるわけではありません。

10人いれば10人とも違うカラダをしているため、診療ガイドラインの情報を頭に入れておきながら、患者さん個々の状況を把握し、適切な治療方針を決定していきます。

 

Gradeとは

Gradeは、推奨度を段階的に位置づけています。

以下の表をご参考にしてください。

GradeがAの方が高く、Iの方が低いです。

Gradeが高いのは、信憑性が高く、治療などを行うように強く推奨されています。

 

 

アキレス腱診療ガイドラインとは

それではアキレス腱診療ガイドラインについて、ご紹介していきます。

まずはアキレス腱の構造について簡単にご説明します。

 

アキレス腱とは?

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋と、かかとの骨である踵骨(しょうこつ)をつなげる重要な役割をする部分です。

 

下腿三頭筋の重要な働きは、足関節の底屈です。

下腿三頭筋が働くことで、つま先を行うことができます。

 

アキレス腱が下腿三頭筋と踵骨をつなげることで、つま先立ち等の動作が可能となります。

 

下腿三頭筋については、こちらで詳しくご紹介しています。
ご参考にしてくださいね。

→下腿三頭筋についてはこちら。

 

アキレス腱断裂ってどんなの?

まずはアキレス腱断裂がどのようなものなのか、ご紹介していきます。

 

アキレス腱断裂とは?

アキレス腱断裂とは、アキレス腱が断裂してしまう病態です。

30〜40歳ぐらいで、久しぶりにスポーツをした人が断裂をしてしまうケースが多いです。

それではガイドラインをご紹介していきます。

 

アキレス腱断裂の発生数はどのくらいか.発生数に経年的変化があるか

 

ガイドラインの回答

GladeI 欧米の発生数の報告では人口10万人あたり6.3人から37.3人と,国あるいは地域で異なっている.

GladeB 発生数は変化しており近年増加傾向にあります.

本邦では発生数についての報告はなし.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士のから一言

アキレス腱断裂の発生数は、近年増えてきていますが国や地域などで異なります。

また、このデータは欧米のものであり、日本ではまだ報告がないため、日本に当てはまるとは限りません。

しかし、アキレス腱断裂は増加傾向にあるため、スポーツなどをする方は注意しましょう。

 

 

アキレス腱断裂受傷の好発年齢はどのくらいなのか.また,性差,左右差,季節性はあるか

ガイドラインの回答

Grade B 受傷好発年齢は30〜40歳代であり,50歳以上の年齢層にもう一つ小さなピークがある.若年層ではスポーツによる受傷が多いが,高齢層にはスポーツ以外の日常活動中の受傷が多い.

Grade Ⅰ 男女の発生比率は差がないとするものから,女性1に対し男性6.3までさまざまであり,男性に多い傾向はあるものの断定し得なかった.また女性は男性より受傷年齢が高い

Grade C 左右差では右41~45%に対し左52~59%とやや左に多い.

Grade I 発生の季節性があるとは言えない.

引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂の好発年齢は30〜40歳代です。

この年代は、日頃は仕事をしていて運動はたまにやる年代です。

 

若い年代はスポーツによる受傷が多く、中高年以上はスポーツ以外での受傷が多いことが特徴です。

スポーツ以外の受傷では、日常生活で受傷することがあり、段差から飛び降りたり、転倒などで生じます。

 

例えば、雪で車が動かなくなり、車を押して動かそうと踏ん張ったときにアキレス腱が断裂してしまったとうこともあります。

 

アキレス腱断裂は左右で大きな差はありませんが、やや左足のほうが多い傾向にあります。

右側を受傷してしまった場合、手術後しばらくは装具をつけたりするため、車を運転することが難しくなります。

運転する前に医師に一度確認しましょう。

 

アキレス腱断裂の発生に季節はないとされていますが、日本では秋に運動会があり、運動不足のお父さんたちはアキレス腱断裂をするリスクがあるため、この時期は特にアキレス腱断裂に注意しましょう。

 

 

アキレス腱断裂はスポーツ活動中の受傷が多いのか.また,どのようなスポーツで多く受傷するのか

ガイドラインの回答

Grade B アキレス腱断裂をスポーツ活動中に受傷したのは60〜81%の症例であり,スポーツによる受傷が多いことが示された.国による競技人口の差異を考慮せずに言えば,球技,ラケット競技での受傷が多く,種目別にはバドミントン,バレーボール,サッカー,テニスなどの球技およびラケット使用競技での発生頻度が高い.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂の6〜8割はスポーツで受傷しています。

 

またアキレス腱断裂を起こしやすい競技種目もあり、バドミントンやバレーボールなどの競技で起こる頻度が高いです。

 

アキレス腱断裂が起こる場面として、バックステップやジャンプの着地、ステップ動作などで、発生することが多いです。

特に30歳以降はアキレス腱断裂の好発年齢となるため、特に注意しましょう。

 

 

アキレス腱断裂の病因・病態とは

それでは、アキレス腱断裂の要因や病態についてご紹介していきます。

 

アキレス腱の肥厚はアキレス腱断裂の危険因子となりうるか

ガイドラインの回答

GradeC アキレス腱の肥厚は腱の退行性変化の存在を示唆し,かつアキレス腱断裂発生の危険因子となりうる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱は年齢とともに厚くなり、アキレス腱断裂の危険因子となります。

10歳代でアキレス腱断裂を起こすのはほぼなく、30〜40歳代でアキレス腱断裂が多い要因はこの退行変性です。

また30〜40歳代ではスポーツも趣味程度で行っている方が多いため、この時期にアキレス腱断裂が多い要因の一つです。

 

アキレス腱断裂の発生には,基盤に必ず腱の変性が存在するか

ガイドラインの回答

Grade C アキレス腱断裂は基盤に腱の変性が存在して発生すると考えられる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂は、アキレス腱が変性をしていると発症する可能性があります。

 

慢性的なアキレス腱炎は、腱が変性をしている可能性があるので、アキレス腱断裂には注意をしましょう。

アキレス腱炎の症状は、アキレス腱に痛みが生じたり、熱感などの炎症症状が生じます。

歩行時や立ち上がりなどでアキレス腱に痛みが生じた場合は、一度整形外科を受診してもいいかもしれませんね。

 

 

アキレス腱断裂を誘発する可能性のある薬物はあるか

ガイドラインの回答

GradeB fluoroquinoloneやciprofloxacinなどの抗菌剤は,アキレス腱断裂を誘発する可能性が考えられる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

抗菌薬の中には、アキレス腱断裂を誘発する可能性のあるものがあります。

抗菌薬とは、細菌による感染を抑える薬です。

 

フルオロキノロン系抗菌薬のシプロフロキサシンは、普段の診療で広く使われている薬剤の一つであり、服用したことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 

アキレス腱断裂の発症のピークは30〜40歳代ですが、抗菌薬によって高齢者でアキレス腱断裂を生じる可能性があります。

 

 

アキレス腱断裂の診断とは?

医療面接(問診・病歴)だけでアキレス腱断裂の診断は可能か

ガイドラインの回答

Grade C 問診や病歴単独で,ある程度アキレス腱断裂を予想することは可能である.よって,問診や病歴をしっかり聴取することは基本であり重要である.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂は断裂する前に前ぶれのような症状が生じることがあります。

 

アキレス腱部の痛みや違和感などはアキレス腱部に炎症や変性が起こっている可能性があり、アキレス腱断裂の前ぶれのため、このような症状が生じたら要注意です。

 

アキレス腱断裂時の訴えとして、

『後ろから蹴られた感じがした』

『後ろからボールを当てられた感じがした』

などを訴えます。

 

アキレス腱が断裂していても歩くことはできるため、上記のような訴えがあれば医療機関を受診しましょう。

 

アキレス腱断裂の診断において,特徴的な臨床所見はあるか

ガイドラインの回答

GradeC 受傷時にアキレス腱部に認められる陥凹やgap signは特徴的な局所所見である.歩行は可能な場合はあるがつま先立ちは不可能である.Simmonds test, Thompson testをはじめ各種徒手的検査を要す.2つ以上の臨床的検査法でアキレス腱断裂を示唆された場合,診断は確実と考えられる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱部の陥凹とは、アキレス腱が断裂している部分の凹みのことです。

正常なアキレス腱は張りがあり、一本の線のようになっています。

 

しかし、アキレス腱が断裂すること、その一本の線が切れてしまうため、切れている部分は凹んでしまいます。

この凹みは簡単に触ることができます。

 

アキレス腱はふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋と、かかとの骨である踵骨(しょうこつ)をつなげています。

そのためアキレス腱が切れると下腿三頭筋の力は踵骨へ伝わらなくなります。

下腿三頭筋が働くとつま先立ちをすることができますが、アキレス腱が断裂することによって、 つま先立ちが不可能となります。

 

アキレス腱断裂の所見の一つに、Thompson testやSimmonds testがあります。

このテストはふくらはぎを握って、足首が底屈方向(足の裏側)に向かって動けばアキレス腱は断裂していません。

アキレス腱断裂の場合は、ふくらはぎを握ってもアキレス腱が断裂し力が伝わないため、足首は動きません。

 

Thompson test(トンプソンテスト)のやり方については、こちらで画像を使ってわかりやすくご説明しています。

参考にしてくださいね。

→トンプソンテストのやり方や説明はこちら。

 

〜アキレス腱断裂の所見〜

✓アキレス腱部の陥凹

✓つま先立ち不可能

✓トンプソンテスト陽性

 

アキレス腱断裂の診断において画像診断は必要か

ガイドラインの回答

GradeB アキレス腱断裂においては問診および臨床所見において特徴的なサインがあり,多くの場合においてその診断は可能であり,絶対的な必要性はないが,画像所見を追加することによりその精度は増してその有用性は高い.

GradeC 存療法や手術療法におけるアキレス腱の修復状態を画像的に把握することにより,機能訓練を含めた後療法を進めるうえで有用性がある.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

問診を行ったり、実際に患部を診ることで診断がつくこともありますが、中には診断に迷うこともあります。

この場合は、レントゲンや超音波なども使い診断をします。

 

超音波はレントゲンと違って被爆するリスクがなく、その場で行えるため近年診断に用いる医師も増えてきています。

 

また、超音波は医師以外の職種も使うことができ、理学療法士もリハビリ中に超音波を使って患部の状態を評価することもあります。

こうすることで、よりよい理学療法を提供する一つのきっかけにもなります。

 

 

アキレス腱断裂の診断で単純X線検査の有用性はあるか

ガイドラインの回答

GradeB X線単純写真で,アキレス腱断裂そのものの描出は不可能であるが,特徴的なサインによりアキレス腱断裂は示唆される.

GradeI 付着部裂離骨折は否定できる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂をレントゲンで診ると、アキレス腱は切れてないため黒く透けて見えます。

アキレス腱断裂は腱で切れることもあれば、アキレス腱がついているかかとの骨(踵骨:しょうこつ)が剥離して切れることもあります。

レントゲンでは、踵骨の剥離骨折状況もわかります。

 

 

アキレス腱断裂の診断で超音波検査の有用性はあるか

ガイドラインの回答

GradeB アキレス腱の断裂の診断において超音波検査(US)は非侵襲的かつ簡便な検査である.完全断裂の診断においてその診断率は高い.また部分断裂やアキレス腱炎などの診断や保存的治療の経過観察において臨床的な有用性がある.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

超音波といってイメージがつきやすいのが、妊婦さんが検診でお腹の赤ちゃんを見るときに使っている機械です。

プローブというセンサーのようなものの先端にジェルを付けて検査します。

 

超音波の特徴はレントゲンのように放射線を使わず、また簡単に行うことができます。

 

超音波検査では、アキレス腱の断裂がわかり、また治癒過程もわかるため、治療やリハビリを行う上でとても有用です。

最近では、医師以外でも理学療法士が使えるところも増えてきているため、今後、さらに超音波は普及していくでしょう。

 

 

アキレス腱断裂の診断でMRIの有用性はあるか

ガイドラインの回答

GradeB MRI検査はアキレス腱断裂の診断において必須な検査と支持する論文は存在しない.臨床所見や超音波検査などを施行すればかなりの症例が診断可能と思われる.しかし,より詳細な軟部組織の情報や治療における経時的変化を詳細に把握する場合においては有用な検査である.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂の診断は、実際に患部を診たり、超音波検査によってほとんどは診断することができます。
しかし、患部を診るだけや超音波だけではわからない部分もあるため、その場合はMRI検査を行うことがあります。

 

レントゲン検査は、筋肉や靱帯、腱などを写すのは苦手ですが、MRIはこれらを写すことが得意なので、筋肉などを写すときは大活躍します。

 

MRIやCTについてはこちらで詳しくご紹介しています。
ご参考にしてください。
→MRIやCTの違いなどはこちら。

 

 

アキレス腱断裂の治療とは?

それでは、アキレス腱断裂の治療についてご紹介します。

 

アキレス腱断裂の治療には、保存療法と手術療法があります。

保存療法は、ギプスによる固定で治療を行います。

手術療法は、切れたアキレス腱を縫う手術方法になっています。

 

手術療法としての端々縫合術の位置づけはどうか

ガイドラインの回答

GradeB 端々縫合術は活動性の高い症例にも有用である.

GradeB Triple Bundle法は術後の固定期間を短縮でき,術後早期の荷重負荷が可能で,再断裂も予防できる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱の切れた断端と断端を縫合する方法です。

手術後は、早い段階で体重をかけられ、歩行や日常生活を行えるようになります。

 

 

経皮縫合術は他の切開縫合術と比較して有用か

ガイドラインの回答

GradeB 経皮縫合術は神経損傷などの合併症を予防できれば有用な方法である.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

手術には、皮膚の上から行う経皮的と、皮膚を切開する観血的があります。

 

一般的な手術は、皮膚を切開して断端を縫合します。

そのため神経損傷などのリスクがあります。

 

これに対し、経皮的手術は、切開せず針のようなもので穴を開けて行うため、皮膚を切開する方法と比べ神経損傷を起こすリスクは少ないです。

また術創部が小さいため、皮膚トラブルも観血的と比べると低いです。

 

手術療法後の早期運動療法は有用か

ガイドラインの回答

GradeB 術後に装具を使用しての早期運動療法は術後キャスト固定群と比較して良好な治療結果が得られ,術後の固定期間を短くすることが推奨される.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

キャストとはギプスのことで、手術後ギプスで固定するより装具を使用した方がリハビリは良い結果が得られています。

 

装具を使うことで、早い段階から足関節を動かすことができ、歩行練習も行うことができます。

早い段階から足関節を動かすことができることで、関節が固くならず、また筋肉の萎縮を防ぐことができます。

 

アキレス腱断裂後は、特にふくらはぎである下腿三頭筋の筋萎縮が起こるため、早い段階から筋力トレーニングを行うことがポイントです。

これにより、結果としてスポーツ復帰の時期が早くなります。

 

アキレス腱断裂後のリハビリについては、こちらで詳しくご紹介しています。

ご参考にしてくださいね。

→アキレス腱断裂の痛みや原因、リハビリについてはこちら。

 

 

保存療法(キャスト固定)は有用か

ガイドラインの回答

GradeB 保存療法は手術による弊害もなく有用な治療法であるが,再断裂などの重大な合併症に配慮する必要がある.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

保存療法は、手術をせずにギプスで固定して治す方法です。

手術で皮膚を切開したりしないため、感染症や皮膚トラブル、神経損傷などを起こすリスクはありません。

しかし、手術療法と比べ再断裂するリスクがあることや、アキレス腱が縫合しているかどうか医師がしっかりと判断する力が必要となります。

 

 

保存的装具療法は有用か

ガイドラインの回答

GradeB 保存的装具療法における早期運動療法は機能回復面からも有用といえる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

保存的装具療法はギプス固定だけではなくではなく、途中から装具に切り替え行います。

装具にすることで、患部を確認することができたり、早い段階から歩行練習もできるため、筋力の低下を防ぐことができます。

 

また歩行することができるため、入院期間も短く、仕事復帰も比較的早い段階でできるため、ギプスだけの治療と比べ良いでしょう。

 

スポーツ選手には特別な治療が必要か

ガイドラインの回答

GradeI 複数のエビデンスが存在するが結論が一様ではなく,現時点ではスポーツ選手に特別な治療法があるとはいえない.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

治療方法はさまざまな報告はありますが、結論が一様ではないのが現状です。

そのため、主治医の考えによって治療方法が選択されます。

しかし、どんな治療法でも下腿三頭期の筋力低下は起こるため、筋力強化は必須となります。

 

 

アキレス腱皮下断裂治療法別により再断裂に差があるか

ガイドラインの回答

GradeA 再断裂率は手術療法で低く保存療法で高い.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

再断裂とは、再度アキレス腱が断裂してしまうことです。

アキレス腱断裂の治療後で最も注意しなければならないことが再断裂です。

再断裂してしまうと、再手術やキャストで固定をしなければなりません。

 

再断裂率は手術療法で1.7〜5.4%、保存療法で10.7〜20.8%と、保存療法の方が高い傾向があります。

 

そのため、再断裂だけで考えると手術療法の方が良いです。

しかし、手術療法は感染や神経損傷などのリスクもあり、手術療法や保存療法にはそれぞれ良い点、悪い点があるため、主治医の治療方針により決まります。

 

アキレス腱断裂後は、再断裂を防ぐことがとても重要となります。

→アキレス腱断裂後の再断裂を防ぐ5つのポイントはこちら

 

 

膝上(AK)キャストと膝下(BK)キャストとで再断裂に差があるか

ガイドラインの回答

GradeI キャスト固定法における再断裂の差は,結論が一様でない.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

膝上のキャストとは膝関節も固定するタイプで、膝関節と足関節の療法を固定します。

膝下キャストとは膝より下から固定するタイプで、足関節のみの固定となります。

固定方法によって、アキレス腱の再断裂の差に統一した結論はでていません。

 

 

アキレス腱断裂治療後に患側の機能低下が残るか

ガイドラインの回答

GradeA アキレス腱断裂治療後の患側に何らかの機能低下が残る.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂の治療後に、機能低下が残る可能性は高いです。

アキレス腱断裂後は特に下腿三頭筋の筋力低下が生じやすく、回復まで時間を要します。

 

下腿三頭筋は、ふくらはぎの筋肉でつま先立ちをするときに働きます。

アキレス腱断裂後は、片足でつま先立ちができても、反対側と同様に最大までつま先立ちをすることが難しいことがあります。

そのためリハビリ開始早期より、下腿三頭筋のエクササイズは行っていくことがポイントです。

 

下腿三頭筋の効果的なトレーニング方法を、理学療法士が徹底解説しています。

詳しくはこちら。

→効果的なカーフレイズのやり方はこちら。

 

 

アキレス腱断裂の職場復帰はいつごろか(職場を離れるのは何日くらいか)

ガイドラインの回答

GradeI 一般的な職場への復帰(return to work),あるいは職場を離れた期間(time off work)とした場合,職種の違い,社会生活,生活様式,風習,治療方法の違いなど複雑な要素が介在し,これらを明確に比較検討した報告はなく結論は一様ではない.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂後の職場復帰に関しては、職業などによって差が生じるため一概にはいえません。

 

デスクワークであれば、通勤ができさえすれば仕事ができるため、歩ければ仕事復帰ができます。

重労働であれば、重い物を持ってしっかりと歩けるようにならなければ仕事復帰はできません。

警察官であれば、犯人を捕まえられるように走れるようにならなければ仕事復帰できません。

 

このように、仕事の種類によって復帰時期や目標が変わってきます。
そのため、担当の医師や理学療法士と相談し仕事復帰時期を検討しましょう。

 

 

アキレス腱断裂のスポーツ復帰はいつごろか(治療法別で差があるか)

ガイドラインの回答

GradeI 治療法別でのスポーツ復帰時期や差異などについて,一定の指針を明示することができない.

GradeA 以前のスポーツへの復帰については手術療法が保存療法より勝る.

GradeB 平均スポーツ復帰時期は,術後キャスト固定で9ヵ月,BK装具下の早期運動訓練群で6ヵ月である.

GradeC 平均スポーツ復帰時期は,保存療法で7ヵ月である.

以上より,スポーツ復帰は可能であり,スポーツ復帰は平均6〜9ヵ月後と考えられる.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

手術療法と保存療法を比べると、手術療法の方がスポーツ復帰できる傾向にあります。
またキャスト固定と比べ、装具を使用し早期にリハビリを行ったほうが早くスポーツ復帰しています。

スポーツ復帰の時期はおよそ6〜9ヶ月ですが、競技種目や機能回復状況によって長くなることもあります。

スポーツ復帰をするためには、しっかりと筋力や関節可動域を獲得し、アキレス腱に負担のかからない動作を獲得する必要があります。
アキレス腱断裂を手術し治ったとしても、アキレス腱に負担のフォームや動作パターンを修正しないと、アキレス腱には負担がかかったままになります。

 

医者にアキレス腱断裂を治してもらい、動作フォーム等は理学療法士と一緒に改善していくとよいでしょう。

 

 

 アキレス腱皮下断裂を予防する方法があるか

ガイドラインの回答

GradeI アキレス腱皮下断裂を予防する方法で,ウォーミンアップやストレッチングとの関連については一定の結論は見出せない.
ただし,アキレス腱断裂者の2/3はウォーミンアップを実施していたが,その1/10しかストレッチングをやっていないため,アキレス腱皮下断裂を予防する方策でストレッチングの有用性の検証が行われる必要がある.
引用:アキレス腱断裂診療ガイドライン

 

理学療法士から一言

アキレス腱断裂を予防する方法は、一定の結論は出ていないのが現状です。
しかし、アキレス腱断裂者の中でストレッチをウォーミングアップでしていたものは少なかったため、今後ストレッチとアキレス腱断裂についてさらに研究を行っていく必要があります。

 

理学療法士のまとめ

今回、アキレス腱断裂診療ガイドラインをもとに、私の体験談も含めご紹介してきました。

 

ガイドラインは根拠のある情報をもとに作られているため、今回ご紹介したことを参考にしていただくとよいでしょう。

 

アキレス腱断裂はスポーツを行う方に多いため、スポーツをやる方は事前に知っっておいてもいいでしょう。