太ももの骨を大腿骨(だいたいこつ)といい股関節を構成する骨の一つです。
股関節を構成する大腿骨には靱帯や血管が多くあり非常に重要な骨です。
今回は大腿骨の解剖、靭帯や血流についてご紹介します。
大腿骨とは?
大腿骨とは太ももの太い骨のことです。
イラストでみてみましょう。
先端の丸い部分を大腿骨頭といい、寛骨臼と接地し股関節を構成します。
大腿骨頭の下のくぼんでいる部分を大腿骨頸部といいます。
外側の大きな出っ張っている部分は大転子といい、中殿筋や外旋筋など重要な筋肉がつきます。
以前に中殿筋と外旋筋についてご紹介しています。
内側の小さな出っ張りは小転子といい、腸腰筋がつきます。
以前に腸腰筋についてご紹介しています。
大腿骨頭や小転子は触ることはできませんが、大転子は触ることができます。
足の付け根の外側を触った時に一番出っ張っている部分が大転子です。
大腿骨の下の部分は膝関節を構成します。
関節包とは?
大腿骨頭は関節包内にあります。
まず関節包についてご説明します。
関節包は線維膜と滑膜からできています。
引用1)
関節の中は関節腔となっており、この中には滑液が入っています。
滑液とは高濃度ヒアルロン酸を含む液のことです。
滑液の役割とは、①関節軟骨の栄養 ②関節面を滑らかにし摩擦を減らす。 ③圧迫を分散し、クッションのような働きをします。
関節包は大腿骨頸部から寛骨臼についています。
引用2)
関節包は臼蓋の辺縁部から起こり, 転子間稜に付着しています
関節包より中を関節包内、関節包より外を関節包外といいます。
大腿骨の骨折である大腿骨頸部骨折は関節包内骨折であり、関節包外の骨折だと大腿骨転子部骨折となります。
股関節の靭帯とは?
股関節には多くの靭帯があり、これらの靭帯により股関節が安定しています。
一つずつご紹介していきましょう。
腸骨大腿靭帯とは?
股関節を補強する靭帯で前側にあります。
これは人体のなかで最も高い強度を持つ靭帯であり、別名Y靭帯ともいいます。
この靭帯は下前腸骨棘から転子間線につきます。
腸骨大腿靭帯は股関節伸展・外旋で最も張ります。
この立位姿勢は腸骨大腿靱帯を張らせて股関節を安定させているため、筋肉を使わずに立っています。
引用3)
恥骨大腿靭帯とは?
股関節を補強する靭帯で股関節の下側についています。
閉鎖稜と恥骨上枝から腸骨大腿靭帯の深部と一緒になります。
恥骨大腿靭帯は股関節を外転させ、最大に伸展した際に最も張ります。
坐骨大腿靭帯とは?
股関節を補強する靭帯で股関節の下部にあります。
坐骨から大腿骨の転子間線に付着します。
坐骨大腿靭帯は股関節最大内旋・伸展時に最も張ります。
大腿骨頭靭帯とは?
大腿骨頭と臼蓋の間にある靭帯です。
大腿骨頭窩から寛骨臼診。
大腿骨頭に入る血管の一部はこの靭帯をつたわります。
大腿骨頭への血行とは?
大腿骨頭には内外側大腿回旋動脈と大腿骨頭靱帯動脈から血行が分布します。
イラストでみてみましょう。
引用4)
外腸骨動脈系の大腿深動脈の分枝 → 内外側大腿回旋動脈
内腸骨動脈系の閉鎖動脈の分枝 → 大腿骨頭靱帯動脈
このように大腿骨頭への血行は少ないです。
関節包内は血行が少なくなるのが特徴です。
そのため関節包内である大腿骨頸部骨折が起こった場合、大腿骨頭壊死に注意が必要です。
大腿骨頭へ血行が減少すると大腿骨頭が壊死を起こす可能性があります。
これに対し、関節包外は血行がよく壊死を起こす可能性は低いです。
まとめ
今回は股関節の靱帯や血行についてご紹介してきました。
股関節の重要な靭帯は、腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯、大腿骨頭靭帯です。
股関節の血行は内・外側大腿回旋動脈や大腿骨頭靱帯動脈で供給されます。
血行は関節包内で少なく、血液が減少すると大腿骨の骨頭壊死を起こす可能性があります。
股関節を理解する上で、靭帯や血行はとても重要です。
しっかりと押さえておくといいと思います。
参考・引用文献
1)落合慈之ら:整形外科疾患ビジュアルブック.P8.学研.2013
2)坂井建雄ら:プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系 第2版.医学書院.2011
3)嶋田智明ら:筋骨格系のキネシオロジー .医歯薬出版.2005
4)藤岡幹浩:大腿骨頭壊死症とは.整形外科看護18(9).904-909, 2013.
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