“スネの内側の痛み”はシンスプリントの可能性があります。
シンスプリントは陸上競技やバスケットボール、バレーボールで多く発症します。
今回はシンスプリントの原因や症状、治療、ストレッチや予防方法についご紹介します。
シンスプリントは脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)のことです。
この疾患は“スネの内側”に痛みを伴い、慢性的な痛みにつながることがあります。
特にランニングやジャンプを繰り返す競技で多く発症し、over use(使いすぎ)が原因で起こります。
それではシンスプリントについてご紹介します。
シンスプリントとは?
シンスプリントは“スネの内側の痛み”を主症状とします。
痛みは下腿の中〜下1/3の後内側部に出現するのが特徴です。
シンスプリントはover use(使いすぎ)が原因で起こります。
スポーツ選手におけるシンスプリントの発症率は4〜35%、また全ランニング障害のうち6〜16%を占めます。
ランニングやジャンプを繰り返す競技で特に、陸上競技、バスケットボール、バレーボールで多く発症します。
また年齢別でみると、中・高校生で多い傾向があります。
シンスプリントの初期段階は、運動前と運動後に痛みが出現することが多く、日常生活での歩行ではそれほど影響が出ることはありません。
悪化するにつれて運動時の痛みが強くなり、最終的には慢性痛や安静時にも痛みが出現するようになります。
シンスプリントのWalsh分類
stageⅠ:運動後にのみ痛み
stageⅡ:運動中に痛みがあるが、パフォーマンスには影響はない
stageⅢ:運動中に痛みがあり、パフォーマンスが低下する
stageⅣ:安静時にも、慢性的な持続する痛み
シンスプリントの痛みの発生部位とは?
シンスプリントはover useで起こりますが、疲労骨折などの骨の痛みではなく、筋肉や腱である軟部組織由来の痛みです。
そのためシンスプリントである場合、レントゲン画像を撮っても骨は問題ありません。
先ほどご紹介したように、シンスプリントで痛みの訴えが多い場所は脛骨の中〜下部1/3の後内側部です。
シンスプリントの痛みと関係している筋肉は“後脛骨筋(こうけいこつ筋)”,“ヒラメ筋”,“長母趾屈筋(ちょうぼしくっ筋)”,“長趾屈筋(ちょうしくっ筋)”です。
簡単にこの四つの筋肉の復習をしてみましょう。
後脛骨筋の詳しい解剖
起始:下腿骨間膜,脛骨と腓骨の隣接面
付着:舟状骨粗面,内・中・外楔状骨,第2-4中足骨底
神経:脛骨神経(L4.5)
作用:距腿関節底屈,距骨下関節内反(回外)
ヒラメ筋の詳しい解剖 起始:腓骨頭,腓骨頚の後面,ヒラメ筋線,ヒラメ筋腱弓 付着:アキレス腱を介して踵骨隆起 神経:後脛骨神経(S1.2) 作用:距腿関節底屈,距骨下関節内反(回外)
長母趾屈筋の詳しい解剖 起始:脛骨後面の下2/3部,下腿骨間膜面 付着:母趾末節骨底 神経:脛骨神経(L5〜S2) 作用:距腿関節底屈,距骨下関節内反(回外) 中足趾節関節・趾節間関節の底屈
長趾屈筋 起始:脛骨後面の中央1/3部 付着:第2-5末節骨底 神経:脛骨神経(L5-S2) 作用:距腿関節底屈,距骨下関節内反(回外) 第2-5趾の中足趾節関節・近位趾節間関節・遠位趾節間関節の屈曲
次にこの4つの筋肉とシンスプリントとの関係をご説明します。
シンスプリントの原因とは?
シンスプリントの原因について今回は足部からの影響をご紹介します。
シンスプリントになりやすい足の形は“偏平足”や“回内足(かいないそく)”です。
偏平足はみなさんもご存知の通り、足の土踏まずの部分が潰れてしまう状態です。
回内足(かいないそく)とは足首が内側に傾きやすい状態です。
わかりやすく言えば、ねんざと逆方向の動きですね。
回内は距骨下関節(きょこつか関節)で起こります。
距骨下関節の詳しい構造や動きについてはこちらです。
ご興味がある方はご覧ください。
シンスプリントや偏平足、回内足と関係している筋肉が“後脛骨筋”です。
偏平足や回内足になると後脛骨筋には常に伸張ストレスがかかった状態となります。
イラストで確認してみましょう。
偏平足になると足の内側にある舟状骨や楔状骨が下にさがってしまいます。
これにより後脛骨筋が伸ばされるストレスがかかります。
この状態で運動をし続けるとどうなるのでしょうか。
常に後脛骨筋には伸張ストレスがかかり、また後脛骨筋自体も収縮をするため、負担がかかり続けることでシンスプリントになってしまいます。
次にヒラメ筋との関係についてです。
ヒラメ筋も後脛骨筋と同様に足関節底屈・回外(内反)に働きますね。
回内足ではヒラメ筋も伸ばされた状態であり、またランニングやジャンプで地面を蹴るときに強い筋収縮が起こります。
このように偏平足や回内足でランニングをすると、地面に踵がついた際に過剰に後脛骨筋やヒラメ筋が働かなければなりません。
最後に“長母趾屈筋”と“長趾屈筋”の関係です。
長母趾屈筋や長趾屈筋は足関節の背屈制限の原因となります。
正常では足関節背屈するときに距骨は後方へ動きます。
しかし距骨の後ろある長母趾屈筋や長趾屈筋が固くなると距骨が後ろへ動けなくなり足関節背屈制限につながります。
一般的にランニングでは足関節背屈20°起こるとされています。
足関節背屈制限が生じるとランニング時の前方への重心移動が低下し、前方推進力も低下します。
この推進力の低下を補うのがふくらはぎの筋肉であるヒラメ筋であり、過剰に働くようになります。
これが続くとシンスプリントになる一つの要因となります。
このように常に負担がかかるため、筋肉自体の痛みや、筋肉の起始部である下腿骨間膜周囲に痛みが出現します。
シンスプリントの治療法とは?
シンスプリントの治療は保存療法で行われます。
まずは患部の安静、鎮痛薬の処方、アイシングを行い様子をみます。
運動量に関しては主治医との相談が必要ですが、参考として先ほどご紹介した分類のstageⅡにあたる『運動中に痛みがあるが、パフォーマンスには影響はない』以下では、練習量を制限せずに痛みに合わせて行うことが多いです。
StageⅢ以上に関しては、主治医とよく相談して運動量や安静期間を検討してください。
シンスプリントが完治せずにランニングやジャンプを続けていると、疲労骨折になる恐れもあります。
シンスプリントはオーバーユースによる傷害であることをしっかりと理解し対応することが大切です。
シンスプリントの予防法とは?
シンスプリントの予防として、運動前後にマッサージやストレッチをして筋肉の状態を良くしておくことです。
筋肉が固い状態で運動を行うと負担がかかるため、柔らかい筋肉を保つことが重要となります。
これは足関節背屈可動域の獲得にもつながります。
今回は簡単にできる方法をご紹介します。
ストレッチは“アキレス腱伸ばし”を3つの方法で行います。
一つ目はみなさんもよく知っている方法です。
二つめ目は膝を軽く曲げた状態で行います。
三つ目はつま先を内側に向けた状態で行います。
筋肉が固くなった状態で運動を行うと負担がかかるため、柔らかい筋肉を保つことが重要です。
筋力が落ちている場合には筋力トレーニングを行います。
ヒラメ筋を選択的にトレーニングするためには、膝を軽く曲げた状態でのつま先立ちを行いましょう。
負荷量を弱くする場合は座った状態でのつま先立ちを行ってもいいでしょう。
後脛骨筋のトレーニングはチューブを使い行います。
後脛骨筋の働きは足首を下にさげ内側にひねる動きです(足関節底屈+内反)
このように行ないましょう。
足のアーチ(土踏まず)が潰れると偏平足や回内足につながるため、タオルギャザーを行ったりインソールでアーチをサポートすることが重要となります。
タオルギャザーの効果的なトレーニング方法はこちらでご紹介しています。
こちらをご覧くださいね。
まとめ
シンスプリントは陸上競技やバスケットボール、バレーボールで多く発症し、over useで起こります。
症状は下腿中〜遠位部1/3の後内側部に痛みを生じることが多いです。
治療は安静や運動量の調整、鎮痛剤の使用による保存療法です。
シンスプリントの予防はとても重要で、ストレッチや筋力トレーニング、アーチを崩さないようにタオルギャザーやインソールを使用します。
シンスプリントを放っておくと疲労骨折に移行することもあるため、予防や治療をしっかりとしましょうね!
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