脳振盪(脳震盪)=意識消失というイメージですが、実は意識障害がなくても脳振盪を起こしている可能性があります。
今回は、意識障害の評価と、意識障害がない場合の脳振盪の鑑別方法をご紹介します。
脳振盪は、ラグビーなどのコンタクトプレーで、頭部に衝撃が加わることで起こります。
脳振盪の直後は、一時的に気を失ったり、話の辻褄が合わないといった意識障害の症状が出ることがありますが、実はこのような意識障害がなくても脳振盪である可能性は十分にあります。
意識があるから大丈夫と思っていると、実は脳振盪を起こしてこともあるため、指導者は注意が必要です。
それでは脳振盪と意識障害についてご説明していきましょう。
脳振盪とは
脳振盪は、頭に衝撃が加わることで頭蓋骨の中で脳が揺さぶられることによって生じます。
脳振盪のあとに意識障害や意識消失が起こるイメージを持っている方もいると思いますが、意識消失がある脳振盪は実はかなり重症な状態です。
脳振盪には3段階のグレードがあります。
グレードⅠ | 意識消失なし | 症状15分以内 |
グレードⅡ | 意識消失なし | 症状15分以上 |
グレードⅢ | 意識消失あり | − |
このように3段階のグレードに分かれています。
これからもわかるように、意識消失や意識障害があればあるほど重症ということになります。
脳振盪の症状とは?
脳振盪の症状はさまざまです。
自覚症状では、頭痛やめまい、頚部痛や頚部圧迫感などが生じます。
他覚的所見では、意識消失、吐き気や嘔吐、痙攣、バランス障害などがみられます。
認知面に関しては、集中力が低下したり、健忘症状、混乱などが起こります。
また感情的になりやすかったり、寝付きが悪くなったりします。
脳振盪ではこのような症状が生じます。
脳振盪の意識障害とは?
脳振盪は意識障害に注意することがポイントです。
意識障害がなくても脳振盪であることは数多くあります。
例えば、話し方がおかしかったり表情がおかしい場合、年齢や住所などを間違えたりしている場合は意識障害を生じている可能性が高いです。
意識障害の簡単な評価スケールにJCSというものがあります。
300-JCSはJapan Coma Scaleの略です。
これはⅠ〜Ⅲ段階で、さらに各3段階に分かれているため、全部で9段階の評価になります。
Ⅲ:刺激をしても覚醒しない状態 |
300:痛み刺激に全く反応しない 200:痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる 100:痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
Ⅱ:刺激すると覚醒する状態 |
30:痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する 20:大きな声または体を揺さぶることにより開眼する 10:普通の呼びかけで用意に反応する |
Ⅰ:刺激しなくても覚醒している状態 |
3:自分の名前、生年月日がいえない 2:意識障害がある 1:意識清明とはいえない |
これはとても簡単な評価なので、是非試してみてくださいね。
意識障害はどうなる?
脳振盪後の意識障害は、徐々に改善してきます。
しかし、逆に意識障害が悪化するような場合は、脳出血などの別の病気を疑う必要があります。
この場合は脳神経外科に行き受診をすることをおすすめします。
脳振盪の健忘症状とは?
脳振盪の症状の一つに、健忘があります。
健忘とは、記憶の一部が抜け落ちてしまう状態のことをいいます。
頭部外傷後に、受傷の場面やプレー状況を聞くと普通に答えることができますが、しばらくして聞くとその部分の記憶はなくなっていますが、昔の記憶はしっかりと覚えています。
健忘は、近似記憶といって直前の記憶などを覚えておくことが苦手であり、反対に長期記憶のような昔の記憶は問題なく覚えています。
つまり、頭部外傷後に一時的に記憶が抜けている場合は、脳振盪の健忘症状である可能性があるため、脳振盪を疑いましょう。
理学療法士から一言
脳振盪は意識障害がなくても生じていることがあります。
頭部外傷後の健忘症状などに注意しましょう。
また意識障害はJCSなど簡単に評価できるスケールがあるため、活用してみましょうね。
参考文献
・野地雅人:意識障害がなくても脳振盪である,臨床スポーツ医学,33(7),2016
・森重裕:頭部を強く売っていなくても安心はできない,臨床スポーツ医学,33(7),2016