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先天性股関節脱臼の原因や予防方法とは?!リーメンビューゲル装具治療や注意点についてご紹介!

先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)をご存知ですか?

乳児の女の子に多い股関節の傷害で、保護者は必ず知っておいた方がいい傷害です。

原因は日常の生活習慣も関係しています。

今回は先天性股関節脱臼の原因予防方法治療方法注意点治療中や治療後の生活についてご紹介します。

先天性股関節脱臼 

先天性股関節脱臼は今から40〜50年ぐらい前に多かった傷害で、数は減りましたが近年でもみられる小児疾患の一つです。

 

特徴として乳児の女の子に多くみられます。

 

先天性股関節脱臼は数年前から名前が変わり、現在は発育性股関節形成不全といわれています。 

 

発育性股関節形成不全とは?

数年前まで先天性股関節脱臼といわれていましたが、現在は発育性股関節形成不全に名前が変更になりました。

 

以前は生まれつき股関節が脱臼しているという考え方だったため、“先天性”という名前がついていましたが、現在は産まれてきてからの生活習慣が原因と考えられているため名前が変わりました。

 

以前は遺伝が原因とされていましたが、現在は遺伝である可能性が低く股関節脱臼の7割以上は家族に股関節が悪い人がいなくても股関節脱臼が起こっています。

 

では生活習慣の原因とは何なのでしょうか。 

 

現在いわれている原因として、オムツの仕方や抱っこの仕方、最近流行っているスリングによる育児習慣が問題視されています。

 

産まれたばかりの赤ちゃんは筋肉や靭帯が出来上がっていないため、股関節はとても不安定な状態にあります。

そのためオムツの仕方や抱っこの仕方で脱臼をしてしまう可能性が大いにあります。

(下記で仕方の注意点についてご説明します)

 

股関節の脱臼の症状とは?

赤ちゃんの股関節脱臼は痛みを伴わないため、普通に足を動かしたり寝返りをしたりします。

 

大人の場合は脱臼すると痛みが出たりしますが、赤ちゃんは脱臼していても痛みがないため泣くこともなく足も動かすのでわかりづらいです。

 

比較的わかりやすい脱臼の症状として、①オムツ替えで足を広げた時に片方だけ開きにくい、②足を動かした時に股関節がコリコリとクリック音がなる症状が見られます。

 

股関節脱臼が見つかるケースとして、1ヶ月・3〜4ヶ月検診の時、歩き始めた時に発覚することが多いです。

 

1ヶ月・3〜4ヶ月検診の時に医者が股関節脱臼しているか検査をします。

検査方法として両足を広げる開排(かいはい)動作を行います。

開排制限 引用1)

開排テストの方法として仰向けに寝た状態で足を曲げ広げます。

左右の足の開き具合を比べ正常では同じぐらい開き、脱臼している場合は脱臼側の足の開きが悪くなります。

 

1ヶ月・3〜4ヶ月検診で整形外科の医者が来て股関節が脱臼しているかどうか確認しますが、見逃されることがあります。

 

実は検診に来る医者は小児専門の整形外科の医者であるとはかぎりません。

 

今年の4月にこのような記事が発表されています。

11年4月~13年3月の2年間に股関節脱臼と診断された子どもは1295人で、うち199人(15・4%)が1歳以降に診断されていた。さらにこのうちの36人は、何と3歳以上での診断だった。注目すべきは、1歳以降に診断された199人の大半が公的乳児健診を受けていたにもかかわらず、異常発見に至らなかったことだ。「健診での見逃しが裏付けられました」と服部さんは話す。

共同通信社 平成27年04月21日  

 

この記事でご紹介されているように検診では引っかからず、成長した時に歩きづらそうにしているのをみて病院に行くと脱臼していたというケースも多くあります。

 

すべての医者が高い技術をもっているわけではないということを覚えておいて下さい。

 

足の動きに不安がある場合は近くの街医者やクリニックではなく、小児専門の医者がいるある程度大きな病院を受診することをお勧めします。

 

股関節脱臼について子育てサイト“シルミルマモル”が公開している動画がわかりやすいのでご紹介します。 → 〜早期発見!赤ちゃんの病気 股関節脱臼 動画〜

 

 

股関節脱臼の検査方法についてご紹介します。

先ほどご紹介した開排動作が最もよく使われている検査法の一つです。

開排動作とは両足を曲げた状態で開く検査です。

 

股関節脱臼の検査は開排動作以外にアリス徴候があります。

アリス徴候は仰向けに寝た状態で足を曲げ、両膝の高さをみます。

左右の高さを比べ、脱臼してる場合は脱臼側の高さが低くなります。

 アリス徴候

引用1)

 

開排動作やアリス徴候で脱臼しているかどうかの判断は難しいと思います。

 

一般の方が一番簡単にできる方法として、足の付け根のシワの本数をみて下さい。

 

左右で足のシワの本数が違う場合は脱臼している可能性があります。

脱臼側の足はシワの本数が増える傾向にあります。

見方としては仰向けの状態で股関節から膝までの間のシワの本数を比べます。 

 

なぜ脱臼をしているとシワの本数が増えるのでしょうか。

このイラストは右足を横から見たものになります。

先天性股関節脱臼 

引用2) 

 

左右を比べて差がある場合は股関節脱臼している可能性があるため病院を受診したり、いきなり病院に行きづらければ助産師がいる子育て相談所へ行き相談してみるといいでしょう。

 

股関節脱臼の予防方法や注意点とは?

近年、股関節脱臼の原因は産まれてきてからの生活習慣が関係していると言われています。

そのため生活習慣に気をつけることで股関節脱臼を予防できる部分もあるということです。

 

特に注意していただきたいのが、オムツの仕方や着衣の選択、抱っこの仕方、スリングを使用しないことです。

 

オムツの仕方で注意することは足を伸ばした状態で行わないことです。

足を伸ばした位置でオムツをすると脱臼してしまいます。

 

赤ちゃんが自分の力で足を伸ばすことは問題ありませんが、強制的に足を伸ばしたりすることは良くありません。

 

オムツは履くタイプのものではなくテープタイプのものを選択し、きつくしめないように注意してください。

 

着衣に関しては足が締め付けられないものを選択します。

服を着て足を動かした時に楽に足が開く素材や形のものを選びましょう。

 

最近流行っているスリングも足がきつくしめつけられるため使用を避けましょう。

街でこのように赤ちゃんを横にした状態で吊るしながら歩いている人を見かけたことありませんか?

スリング スリング 

 引用 左:3 右:4) 

 

この姿勢は赤ちゃんにとって良くない姿勢です。

スリングで吊るされることで赤ちゃんの足はギュッとしめつけられます。

 

この姿勢は脱臼する可能性が高いため、もしスリングを使用している方がいらっしゃれば使用を避けることをお勧めします。

 

スリングを使用するのであれば、断然抱っこ紐の方が安全です。

なぜ抱っこ紐の方が安全かというと、抱っこ紐を使用した時の赤ちゃんの状態はコアラ抱っこと同じで足が開いた状態だからです。

 

抱っこの仕方も注意が必要です。

一番良くない抱っこの仕方は足を閉じるように抱える方法です。

先天性股関節脱臼 のコピー

 引用5)

 

このように両足を抱えるのではなく股の間に手を入れ抱っこしたり、向き合って抱っこするコアラ抱っこの方が股関節には良いです。

 

抱っこは多くの方がするためお母さんだけが気をつけるのではなく、ご家族や抱っこする人にも注意していただくことがとても重要になります。

 

股関節脱臼をする赤ちゃんは夏に比べ冬に多いということを知っていますか?

 

なぜかというと冬はおくるみなどにくるむ機会が多く、また厚着をして股関節周りがきつくなりやすいからです。

そうなると先ほどご紹介したように足を閉じた状態での抱っこになってしまいます。

これは非常に良くない抱っこの仕方です。

これも股関節が脱臼してしまう原因のひとつのため注意をしましょう。

  

股関節脱臼の治療法とは?

もし股関節脱臼をしている場合、治療を開始する時期が早ければ早いほど予後(治り)が良いです。

治療は生後3〜6ヶ月から始めると予後が良いとされています。

 

股関節脱臼の治療法はまず保存療法が選択されます。

リーメンビューゲルという装具を赤ちゃんにつけます。

リーメンビューゲル

 引用6)

 

リーメンビューゲル装具は股関節を曲げた状態で固定するものになります。

固定といってもギプスのようなものではなく硬い布のようなもので作っているため、装具をつけた状態でも足を動かすことはできます。

 

リーメンビューゲルをつけることで股関節は安定した正しい位置に戻ります。

重症例でない限りリーメンビューゲルをつけてから数週間で脱臼は整復されます。

 

ここで注意していただきたいのが、整復されてもしばらくはリーメンビューゲルをつけ続けるということです。

 

最初にも書きましたように赤ちゃんの足は筋肉や靭帯が出来上がっていないため不安定です。

すぐに装具をとってしまうと再び脱臼をしてしまう可能性があります。

 

装具をつける期間は主治医により変わりますが、トータルで3〜4ヶ月程度はリーメンビューゲルをつけます。

 

基本的に装具は24時間つけています。

お風呂の時は外していいという医者もいれば、お風呂すら外しては行けないという医者もいるため主治医の指示に従ってください。

 

装具をつけ始め最初の1周間程度はなれずに赤ちゃんは泣きます。

ですが、人間は不思議なもので徐々に慣れてきます。

個人差はありますが1週間程度で装具になれてくると思います。

 

装具をつけ始めて少しすると赤ちゃんはあまり足を動かさなくなる時期があります。

これは股関節が整復してきた時に起こる反応です。

 

そのため足を動かしていなからといって無理に動かさないようにしましょう。

 

多くの場合はリーメンビューゲルをつけ治療をすることで8割り程度の乳児は整復されますが、脱臼が治らない場合は入院をして足の牽引療法を行います。

 

牽引療法でも整復されない場合は手術療法になります。

 

手術には広範囲展開法やソルター骨盤骨切り術、Ludloff法があり、手術にて股関節の脱臼を治療します。

手術方法や手術後の進め方については股関節の状態や各施設で異なります。

 

リーメンビューゲル装具治療中の生活とは?

装具治療開始後は一週間に一回程度診察が行われます。

診察の時には開排動作や股関節の状態を確認します。

 

2〜4週間程度で股関節が整復されるため、そのくらいに一度レントゲンもしくはエコーを行い股関節の状態を確認します。

 

股関節が整復されたのが確認されてから2〜3ヶ月程度は装具をつけた状態になります。

そのためトータルで3〜4ヶ月程度は装具をつけた状態での生活になります。

 

主治医の指示によりますが、24時間装具をつけっぱなしのケースもあれば入浴のみ外してもいいというケースもあります。

 

オムツを変える時もつけたままの状態になります。

 

装具をつけた状態だと普段着ていた服が着れなくなる物もあります。

足を開いた状態で装具をつけるため、股関節周りが開くことのできる服のほうが便利です。

 

例えばcombi miniが特許を取っているラップコンパクト製品は股関節周りが開いており、また股の部分がボタン式であるため簡単に股の部分をめくることができます。

 

詳し性能に関しては公式HPをご覧ください。

→コンビ ラップコンパクトの性能については公式HPをご覧ください。 

 

このタイプの服であれば装具をつけた状態でも簡単にオムツ交換をできるため便利です。

 コンビ ラップコンパクトの服の一例です。

 

 

外出する時に装具をつけていると周りからの視線が気になる方もいらっしゃると思います。

その場合は装具をつけた上から少し大きめのワンピースを着れば装具はある程度隠れます。

リーメンビューゲル

引用1)

ここで注意してもらいたのが、ワンピースのスカートの部分は広いものを選びましょう。

ワンピースのスカートの部分が狭いと足がきゅうくつになり良くありません。

 

基本的には装具をつけていると足は開いた状態であるため、スカートの部分がかなり広いものでないと股関節には良くないため服の選択には注意しましょう。

 

足のかかとや膝下の部分まで装具がついているため、この部分が気になる方は大きめのハイソックスのようなものを上から履かせることで装具は隠れます。

 

次に装具着用の目的についてご説明します。

装具着用中は必要以外は抱っこを減らし床の上で寝かせて起きましょう。

装具をつけた状態で寝ることで装具に足の重さが加わり足をつっている状態になります。

このつっている状態が股関節脱臼を治している姿勢になります。

 

赤ちゃんは装具をつけていても横になったりゴロゴロします。

無理矢理でなく赤ちゃん自身で左右へゴロゴロする程度であれば問題ありません。

 

 

治療後の生活とは?

装具治療後は徐々にハイハイやつかまり立ちなどできるようになりますが、装具を長期間つけていた関係で他の子に比べ発育に遅れが出ます。

発育の遅れは数ヶ月間装具をつけていたことによるため仕方ないことです。

 

雑誌やインターネットに赤ちゃんが動作ができるようになる日数が載っていますが、あれはあくまで目安です。

 

人間には個性があるのと同じように、動作を獲得するのにも個性があるため遅いこともあれば早いこともあります。

 

そのため無理にハイハイをさせたり立たせたりするのではなく、赤ちゃんが自然に自分の力で動作を獲得していくことを見守ることが大切です。

 

治療で脱臼が整復でき、主治医から禁止動作の指示がなければ問題なく生活をすることはできます。 

治療の具合や股関節の状況にもよりますが、普通に歩くことや運動をすることも可能です。

 

手術をした場合は主治医によって指示が変わってきますが、手術後の経過も良好である研究データが出ており生活をしたり歩くことも可能です。

  

診察については、装具治療中は1週間に1回や2週間に1回。装具治療で股関節が整復した後は3ヶ月に1回など徐々に診察までの期間が伸びていきます。

定期的な診察は6〜7歳ぐらいまで行います。

その後は決まった診察はありませんが、股関節の調子が悪くなった時に受診する形になります。

 

一つ気をつけていただきたいのが、歩いている時や日常生活で股関節に痛みが出現した場合は無理をせず受診をお勧めします。

 

痛みが出ているということは股関節からの何かしらの合図です。

無理をしないことが重要です。

 

まとめ

先天性股関節脱臼は数年前から名前が変わり、現在は発育性股関節形成不全と言われています。

 

以前は先天的に股関節が脱臼していると言われてきましたが、現在は産まれてきてからの生活習慣が原因であることが多いとされています。

 

特にオムツの仕方や抱っこに仕方には注意が必要で、スリングの使用は避けたほうがいいです。

 

特徴として女児に多く、脱臼している場合は足の開きが悪かったり左右の足のシワの数が違います。

 

1ヶ月・3〜4ヶ月検診で股関節脱臼の確認を医者が行いますが、近位見逃されることが増えているため、赤ちゃんの股関節に違和感があるようであれば専門施設に相談をすることをお勧めします。

 

股関節脱臼を治すためにリーメンビューゲルによる装具療法や手術療法があります。

股関節脱臼の治療後、歩いたり日常生活を送れるようになりますが股関節の調子が悪い場合は無理せず受診することをお勧めします。

 

今回は発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)についてご紹介してきました。

 

股関節脱臼は事前に正しい知識を知っておくことで予防できる部分があります。

子育てやこれから出産をされる方、赤ちゃんと接する機会のある方は特に頭の片隅に入れておくことを強くお勧めします。

 

赤ちゃんが健康で元気に育つように正しい知識を知りましょう!

 

参考・引用文献 

1)高橋謙治:先天性股関節脱臼.整形外科看護17(5).445-447.2012.

2)藤原憲太:先天性股関節脱臼を見逃さないポイント.外来小児科17(1).64-70. 2014.

3)品田良之:スリングと先天性股関節脱臼.チャイルドヘルス16(6).386-387. 2013.

4)日本小児整形外科学会:先天性股関節脱臼予防パンフレット

5)若林健二郎ら:先天性股関節脱臼.整形外科看護.18(7).688-693, 2013.

6)金澤慎一郎:小児股関節装具 リーメンビューゲル,SPOC装具,アトランタ型装具,タヒジャン型装具,パチュラー型装具.整形外科看護19(1).44-46, 2014. 

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