鎖骨骨折はコンタクトスポーツやロードバイクでの転倒で起こることの多い骨折です。
今回は鎖骨骨折の症状や手術、リハビリ、スポーツ復帰時期、入院期間についてご紹介します。
鎖骨といえば、鎖骨美人という言葉がありますよね。
鎖骨はカラダの表面からわかりやすい骨の一つです。
鎖骨の構造について説明してから、鎖骨骨折についてご紹介します。
鎖骨の構造とは
鎖骨は首元にある骨です。
鎖骨は細長い骨で緩いS字状の形をしています。
鎖骨の働きとは
鎖骨は細長い骨ですが、とても重要な働きがあります。
鎖骨は肩関節や肩甲骨の安定性に関与しています。
肩関節は上腕骨と肩甲骨により構成されています。
肩関節は体幹と直接連結していそうに見えますが、実は肩関節と体幹はつながっていません。
このように肩関節を構成する肩甲骨は胸郭の上にあり、唯一鎖骨によって体幹と連結しています。
このように鎖骨は肩関節や肩甲骨を安定させるために重要な役割をするのです。
鎖骨が構成する関節とは
鎖骨は2つの関節を構成します。
肩鎖関節(けんさかんせつ)と胸鎖関節(きょうさかんせつ)です。
肩鎖関節とは
肩鎖関節は鎖骨と肩甲骨の一部である肩峰(けんぽう)により構成される関節です。
肩鎖関節の中には、関節円板といって関節の動きを良くしたり、衝撃吸収する働きをする組織があります。
また肩鎖関節の外側には、肩鎖靭帯(けんさじんたい)といって肩鎖関節を安定させる靱帯があります。
肩鎖関節の働きの特徴として、肩甲骨の動きの中心軸となることです。
胸鎖関節とは
胸鎖関節とは、鎖骨と胸骨柄(きょうこつへい)により構成される関節です。
胸鎖関節の中には、肩鎖関節と同じように関節円板があります。
胸鎖関節の外側には、鎖骨間靱帯(さこつかんじんたい)、前後に胸鎖靱帯(きょうさじんたい)、肋鎖靭帯(ろくさじんたい)があり、これらの靱帯によって安定しています。
胸鎖関節の働きの特徴として、鎖骨の動きの中心軸となることです。
鎖骨の動きとは
鎖骨は様々な方向へ動くことが可能です。
鎖骨が動くことで肩甲骨や肩関節もスムーズに大きく動くことが可能となります。
〜鎖骨の可動範囲〜
上方:45°
下方:5°
前方:15°
後方:15°
回旋:50°
例えば鎖骨が骨折することで鎖骨の動きが悪くなると、肩甲骨や肩関節の動きが悪くなってしまいます。
鎖骨骨折とは
それでは鎖骨骨折についてご紹介していきましょう。
鎖骨骨折の病態とは
鎖骨骨折は日常的に多く見られる骨折の一つで、全骨折の約10〜15%を占めるといわれています。
鎖骨は、鎖骨の内側・中央・外側の3つに分けられます。
鎖骨の中で最も骨折しやすい場所が鎖骨の中央であり、鎖骨骨幹部骨折(さこつこっかんぶこっせつ)といい、鎖骨骨折の約80%を占めます。
次に多いのが鎖骨の外側で、鎖骨遠位端骨折(さこつえんいたんこっせつ)といい、鎖骨骨折の約15%を占めます。
一番少ないのが鎖骨の内側の骨折で、鎖骨近位端骨折(さこつきんいたんこっせつ)といい、鎖骨骨折の約5%を占めます。
〜鎖骨骨折〜
骨折全体の約10〜15%
〜鎖骨骨折の内訳〜
鎖骨骨幹部骨折:80%
鎖骨遠位端骨折:15%
鎖骨近位端骨折:5%
鎖骨骨折の原因とは
鎖骨骨折は、ラグビーなどのコンタクトスポーツにより直接外力が加わる“直達外力”で起こる場合、ロードバイクなどで転倒して手をついたことで外力が加わる“介達外力”で起こる場合があります。
受傷機転のほとんどは転倒などの介達外力で起こり、直達外力は少ないです。
鎖骨骨折は若者に多い骨折で、高齢者の場合は同じように転倒しても鎖骨骨折ではなく上腕骨骨折を生じることが多くあります。
鎖骨骨折の症状とは
鎖骨骨折の症状として、患部の腫れや痛みが特徴です。
肩を動かす痛みを伴うことが多くあります。
骨折がひどい場合は骨折部分が盛り上がり、目で見てわかることもあります。
転倒して手をつき、鎖骨が腫れたり痛みが生じた場合は鎖骨骨折の可能性があるため、手を動かさずに医療機関を受診することをおすすめします。
鎖骨骨折の診断とは
鎖骨骨折が疑われる場合は、レントゲン検査やCT検査を行います。
鎖骨が折れているかどうかの判断はレントゲンを撮ればすぐにわかります。
これに加え、鎖骨がどのように折れているのか、骨片(骨の小さな破片)はあるのか、骨のズレはどのくらい生じているのかなど詳しく検査することができます。
レントゲン検査では撮影した方向からしか見れませんが、CTでは3Dで骨を見ることができるため、さまざまな方向から骨の状態を詳しく見ることが可能となります。
これによって今後の治療方針がきまります。
鎖骨骨折の治療とは
鎖骨骨折の治療は、保存療法と手術療法があります。
保存療法とは
保存療法の場合、鎖骨はギプスなどで固定することはできないため、クラビクルバンドを使って固定をします。
鎖骨骨折の場合、折れた鎖骨同士が重なるように転位していきます。
そのためクラビクルバンドを着用し鎖骨が重なる方向へ転位していかないように固定をします。
クラビクルバンドは、両肩を通し背中側で締めるものになります。
保存療法時の注意点として、腕を90°以上挙げないことです。
肩関節を動かすと、鎖骨も一緒に動きます。
肩を90°以上上げていくと、鎖骨は回旋(捻れる)方向への動きが大きくなります。
鎖骨が捻れてしまうと骨が転位したり、骨癒合を阻害してしまいます。
保存療法の場合は、必ず主治医にどのくらいまでなら腕を動かして良いのか確認し、特に90°以上腕を挙げないように注意しましょう。
手術療法とは
手術療法では、プレートやスクリュー、鋼線などを用いて鎖骨を固定します。
手術療法ではズレた鎖骨を修正して固定するため、保存療法と比べ転位する可能性は低いです。
手術自体はそこまで難しいものではありませんが、手術後に鎖骨周囲に傷口が残るため、女性の場合は気になる方もいらっしゃいます。
手術後は術式にもよりますが、90°まで肩を上げてもよい許可が出ることがほとんどです。
入院期間とは
保存療法であれば入院せずに自宅療養となります。
手術の場合は、手術の前日から入院することが多いです。
手術後は傷口に問題なければ、早い段階で退院できます。
手術翌日や手術の翌々日に退院するケースもあります。
主治医の方針にもよりますが、手術後1週間程度で退院とみておいてよいでしょう。
退院後は主治医の診察に加え、リハビリで週1回〜数回通います。
手術後のリハビリとは
リハビリは、手術後翌日より開始となります。
手術後のほとんどは肩関節90°まで挙上することは可能となります。
90°以上の挙上では鎖骨が回旋しズレる方向へ負荷がかかってしまうため、2週間程度は挙上90°までであることが多いです。
手術後は特に炎症管理が重要です。
患部をアイシングで冷やし、炎症症状を極力早く取り除くことがポイントです。
炎症があることで痛みを伴うため、鎖骨や肩関節周囲の筋肉に力が入り、関節が固くなりやすくなります。
筋肉に力が入ってしまうと関節がスムーズに動くことができず痛みを生じ、関節可動域の制限につながってしまいます。
手術後はまず炎症管理をしっかりと行い、筋肉に無駄な力が入らないようにリラクゼーションなどを行って調整をします。
肩関節が動くときは肩甲骨も一緒に動くため、肩甲骨周りの筋肉も固くならないようにし、肩甲骨も動かすようにしましょう。
鎖骨や肩関節、肩甲骨周りの筋肉に無駄な力が入らないように準備をしてから、痛みに合わせて肩を動かすことで関節可動域制限が生じないようにすることができます。
痛みがあるなかで無理に関節を動かすと逆効果となってしまうため、十分に注意し行う必要があります。
鎖骨骨折後のスポーツ復帰時期や完治とは
鎖骨骨折後のスポーツ復帰は、いまだに統一した見解がないのが現状です。
鎖骨の骨癒合は4週間程度とされていますが、日常生活と違いスポーツは負荷量が高いため、4週間でのスポーツ復帰は再骨折のリスクが高いです。
ある報告では手術で鎖骨を固定をした場合に6〜12週間でスポーツ復帰が可能とされています。
スポーツ復帰時期の時期については様々な意見があり、早いものだと6週間、この他には16週間など幅広い意見があるのが現状です。
同じ鎖骨でも骨折部位や折れ方などで治る時期は異なるため、復帰時期は必ず主治医や理学療法士と相談し、骨癒合や機能改善の状態に加え、スポーツ種目なども含め復帰時期を検討することが重要です。
骨折の完治は患者それぞれで異なります。
スポーツ復帰を目標とする方はスポーツ復帰ができれば完治、日常生活の復帰を目標とする方は日常生活ができるようになれば完治となります。
日常生活はスポーツより負荷が低いため、スポーツ復帰の時期より完治までの期間が短くなります。
まとめ
今回は鎖骨骨折についてご紹介してきました。
鎖骨骨折のほとんどは転倒による介達外力が多く、日常生活でも多くみられる骨折の一つであるため知っておくとよいでしょう。
鎖骨骨折はコンタクトスポーツでも起こるため、特徴をしっかりと理解し、スポーツ復帰を目指す場合は焦らずに主治医とよく相談し復帰時期を決めるようにしましょう。