足首の骨折はとても重症な傷害です。
足首を骨折すると手術をするケースが多く2ヶ月以上は杖を持っての歩行となります。
今回は足首の骨折の原因や治療、手術、リハビリについてご紹介します。
足首の骨折はすぐ治りそうに感じる方もいるのではないでしょうか?
実は足首の骨折は体重をかけられるようになるまで1ヶ月程度必要になり、それまでは足をついて歩くことはできません。
そのため入院期間が長引きやすい骨折の一つです。
足首の骨折のご紹介の前にまずは簡単に足首の構造の復習をしましょう。
足関節とは?
普段みなさんがおっしゃっている足首は正しくは“足関節(そくかんせつ)”といいます。
足関節とはこの部分です。
足関節は脛骨(けいこつ)や腓骨(ひこつ)、距骨(きょこつ)、踵骨(しょうこつ)で構成されています。
脛骨や腓骨の下の出っ張っている部分をそれぞれ内果(ないか)・外果(がいか)といいます。
内果は内くるぶし、外果は外くるぶしのことで簡単に触ることができます。
足関節は総称であり、距腿関節(きょたい関節)と距骨下関節(きょこつか関節)のことです。
脛骨と腓骨、距骨で構成される関節を『距腿関節(きょたい関節)』といいます。
距骨と踵骨で構成される関節を『距骨下関節(きょこつか関節)』といいます。
距骨下関節についてはこちらで詳しくご紹介しています。
ご興味がある方はご覧ください。
距腿関節の動きは背屈と底屈です。
正常な可動範囲は背屈20°、底屈45°です。
距腿関節には常に体重がかかり、特に脛骨にかかる荷重が多く、腓骨には体重の1割程度しかかかりません。
足関節の骨折とは?
足関節の骨折は交通事故などでも起こりますが、多くは足首をひねることで骨折することが多いです。
例えば、、、、
①旅行先で坂道を下っている時に足首をひねって骨折したり・・・
②車の洗車をしていて足首が引っかかり転んで骨折したり・・・
③雨の日に濡れた階段で滑って骨折したり・・・
このように日常生活で誰しもが起こりえる状態で骨折することが多いです。
足関節の骨折は主に脛骨と腓骨で起こることが多いです。
内果や外果の片方だけが骨折した場合をそれぞれ内果骨折・外果骨折といいます。
両方が骨折した場合は両果骨折となります。
脛骨の後ろの部分を後果(こうか)といい、この部分も一緒に折れた場合を三果骨折といいます。
引用1)
この3タイプの骨折の中で一番予後(回復)が悪いとされているのが三果骨折です。
骨折の分類はLauge-Hansenの分類やAO分類があります。
引用2)
引用2)
このように骨の折れ方で分類されます。
折れ方である程度どのように足関節をひねって骨折したのか、損傷しているで可能性のある靭帯も予測をつけることができます。
治療とは?
治療は保存療法と手術療法があります。
保存療法はギプス固定を行います。
ギプス固定するため体重をかけたり関節を動かすことはできません。
足関節の骨折は手術療法になるケースが多いです。
骨の折れ方によっても手術方法がかわりますが、基本的には折れている部分をボルトやプレートで固定します。
骨折の状態にもよりますが、多くは手術後4週程度は体重をかけることはできません。
そのためこの間は松葉杖もしくは車いすでの生活になります。
関節を動かす練習は手術後早い段階から開始になります。
骨折の状態によっては数週間関節を動かしてはいけないケースもあります。
手術後、特に注意が必要なのが炎症管理です。
足関節の骨折は患部の腫れや熱がなかなか引けません。
足を下におろすだけでパンパンに腫れてしまう人もいます。
炎症症状があると痛みが出現したり、腫れていることで足関節の動きが悪くなります。
痛みを軽減したり足関節の動きを改善するためには、炎症を引かせる最も効果的です。
炎症管理の方法としてRICE処置を行います。
RICEとは各処置の頭文字を取ったものになります。
RICE処置
Rest:安静
Icing:アイシング(冷却)
Compression:圧迫
Elevation:挙上
〜Rest:安静〜
受傷直後に骨折の疑いがある場合は固定をし安静にします。
これに対し手術後は痛みのない範囲で動かした方が関節が固くなるのを防げたり循環改善にもつながるため、積極的に足関節や足趾を動かすことが重要です。
〜Icing:アイシング(冷却)〜
手術直後で炎症が強い時期は患部を冷やしましょう。
しかし足首の血管は細いため長期間のアイシングは控えましょう。
注意点として冷やしすぎると凍傷になる可能性があります。
冷やす時間:20分冷やす + 40分休憩で行ってください。
〜Compression:圧迫 Elevation:挙上〜
圧迫は包帯で足の先から上へ向かってややきつめに巻いていきます。
挙上は足の下に枕などを置き心臓より高くしましょう。
RICE処置についてはこちらでもご紹介しています。
ご興味ある方はご覧ください。→炎症管理についてはこちら。
手術後のリハビリの流れとは?
基本的に手術翌日よりリハビリは開始となります。
骨の折れ方や手術方法により主治医からの指示が変わりますが、多くは4週間荷重禁止・痛みに合わせて関節を動かすのは可の指示がでます。
手術直後で重要なのはしっかりと炎症を抑えることです。
先ほどご紹介したRICE処置で対応します。
足関節に関しては理学療法士がマッサージや関節を動かしたりしますが、それ以外に手術以外の場所のトレーニングも重要になります。
足関節の骨折は4週間程度体重をかけることができないため、足関節以外の股関節や膝周囲の筋力も低下します。
これを廃用症候群(はいようしょうこうぐん)といいます。
筋力が低下しないように足関節以外のトレーニングも非常に重要になります。
例えば股関節で重要な中殿筋の筋力が落ちてしまうと、歩いた際に体を支えられなくなってしまいます。
こうならないためにも中殿筋のトレーニングもしっかりと行っておく必要があります。
中殿筋の筋力トレーニング方法はこちらでご紹介しています。
ご興味があればご覧ください。
このように足関節以外のこともトレーニングしておくことが重要です。
4週間後に荷重が開始になったとしても、いきなり全体重をかけられるわけではありません。
最初は体重の1/3もしくは1/4から開始になります。
例えば体重60kgの人がいたとすると、体重の1/3は20kgになります。
まずは20kgかた体重をかける練習が開始となります。
その後1週間ごとにレントゲンを撮り、骨の状態で1/2→2/3→全体重と段階的に荷重量を増やしていきます。
このことからもわかるように全体重をかけられるようになるには、かなりの長い期間がかかります。
体重をかけては行けない期間が4週、段階的に体重を上げていく期間が4週のため、全体重可能になるためには2ヶ月前後かかります。
足関節の骨折は非常に長くかかる骨折の一つです。
退院に関しては傷口が落ちつき主治医から退院の許可がでれば、体重をかける前の段階でも退院することは可能です。
しかし両手で松葉杖を持ち歩かなければならないため、とても不便です。
おすすめとしては片方の松葉杖で歩けるようになる時期です。
早くても荷重2/3の時期ですが、片手が使えることで日常生活をスムーズに行えるようになります。
仕事の関係で早く退院しなければならない方は両方の松葉杖で退院されることもありますが、日常生活が不便になるため家族の支援等が重要になります。
退院後は基本的に外来リハビリに通います。
頻度は週に1〜2回程度です。
足の状態をチェックし、問題なければ徐々に松葉杖を外し杖なしで歩く練習を行います。
足関節を骨折すると底屈と背屈の動きが悪くなります。
この動きが悪くなると、しゃがむことや静坐をするのが大変になります。
特に和式トイレを使用する際は不便になる可能性が高いです。
筋力ではふくらはぎである下腿三頭筋が最も低下します。
下腿三頭筋の効果的なトレーニング方法はつま先立ちです。
自主トレがポイント
手術後はリハビリを行いますが、自主トレもかなり重要となります。
1日にうちリハビリは数十分〜1時間程度です。
それ以外の23時間はご自分でリハビリを行わなくてはなりません。
早く良くなりたい方はしっかりと自主トレを行いましょう。
手術後に簡単にできる8つの自主トレを公開してます。
印刷できるプリントもご用意してあるため、ご興味がある方はご参考にしてください。
⇒足関節骨折後に簡単にできる効果的な8つの自主トレとはこちら。
まとめ
足関節の骨折は日常生活で誰しもがなりえる骨折です。
治療は保存療法と手術療法がありますが、多くは手術療法が選択されます。
足関節の骨折は体重をかけられるようになるまで4週間程度かかります。
荷重開始後も段階的に体重をかけていくため、全体重かけられるようになるには約4週間程度かかります。
手術後は炎症症状が強くその影響で痛みが出たり関節が固くなります。
そのため炎症管理がとても重要になります。
足関節の骨折は小さい部分の骨折ですが、治るまで非常に長い期間が必要になります。
みなさんも旅行で坂道を降りるときは特に注意してくださいね!
参考・引用文献
1)山口昌子:足関節周囲骨折.整形外科看護.19(5).516-519, 2014.
2)松井健太郎ら:足関節骨折.関節外科32.188-194, 2013.
だいぶ参考になりました。初診時、足首腓骨骨折との事で、ズレがあり手術した方がいいかCTを撮って帰り、1週間後の再診時ズレも思ったよりましなので手術しないで治しましょう。と言われました。介護職ですが、復帰するには2カ月以上かかると言われました。手術した方が、早く仕事出来るのでしょうか?
それから再診時から足の裏のかかあたりの真下から重心をかけてもよいとの事ですが…ギプスシーネと包帯で固定しています。少しなら片足つけて歩いてもいいのでしょうか?
由美さま
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