歩行の状態は歩行速度などを調べることで簡単にチェックすることができます。
今回は歩行速度や歩行率の計算の仕方、年齢別や性別の平均もご紹介します。
ぜひ、活用してみてくださいね。
歩行の評価では10m歩行テストや5m歩行テストを使って、歩行速度や歩行率などをチェックします。
よく使われている10m歩行テストで解説していきましょう。
歩行速度と歩行率とは
歩行速度とは
歩行速度は歩きの速さのことで、1秒間にどのくらい歩けるのか、1分間にどのくらい歩けるのかなどを表します。
歩行速度は10m歩行を使い、簡単に調べることができます。
歩行速度がわかれば年齢別や性別で比較することができる、自分の歩きの状態が同年代などを比べて落ちているのかなどもチェックすることができます。
カットオフや平均は後ほどご紹介しますね。
歩行率(ケイデンス)とは
歩行率とは、単位時間内の歩数のことです。
後ほど歩行率の計算式は詳しくご説明しますが、例えば、1分間で歩数が60歩の場合は60歩÷1分となり歩行率は60step/minになります。
歩行率という言葉以外でケイデンスとよく聞くことがありますが、歩行率もケイデンスも同じ意味になります。
それでは詳しく説明していきます。
歩行速度や歩行率は10m歩行テストで調べよう
10m歩行テストはすごく簡単にできる方法で、10mの歩くタイムと歩数を測り計算するだけです。
使う道具は2つだけで簡単にできます。
10m歩行テストで使う道具
【10m歩行テストで使用する道具】
□直線距離14m以上ある環境
□ストップウォッチ
計測自体は10mで測りますが、なぜ14m必要かというと助走距離が必要になるからです。
10mピッタリからスタートしてしまうと加速するまで時間がかかるため、本来の歩いているスピードを計測できません。
そのためスタート地点に助走距離として2〜3m設けます。
ゴール地点も同様に10mで終わりにしてしまうと減速してしまうため、ゴール地点を通過し2〜3m先まで歩いてもらいます。
10m歩行テストの計測方法
時間はストップウォッチを用いて計測し、10mのスタート地点の通過でスタートし、ゴール地点を通過したらストップしましょう。
時間に加え、何歩で10m歩けたか歩数もカウントしておきます。
10mのタイムと歩数を使って計算することで、歩行速度や歩行率を出すことができます。
歩行速度の計算の仕方とは
【歩行速度の計算式】
歩行速度=距離 ÷ 時間
歩行速度はこの式で簡単に計算することができます。
歩行速度は、10÷8=1.25m/秒になりますね。
1分間に変換すると、1.25×60=75m/分です。
さらに1時間に変換すると、75×60=4500m/時になります。
つまり、時速4.5km/hですね。
歩行率の計算の仕方とは
【歩行率の計算式】
歩行率=歩数 ÷ 歩行時間
歩行率は60歩÷1分なので、60step/minになります。
80代男性の平均の歩行率は107step/minなので、60step/minは悪いという結果になります。
10m歩行テストで、タイムが10秒、歩数が15歩だったとします。
これを60秒(1分)に変換すると、15歩✕6=90歩になりますよね。
歩行率にすると、90歩÷1分=90step/minになります。
こんな感じで数字を入れ替えれば簡単に歩行率を計算することができます。
年齢別や性別の平均値やカットオフとは
ヒトの歩くスピードは1秒あたり1mとされているため、10歩行のカットオフ値はわかりやすく10秒です。
この10秒という数値がポイントで、一つの堺となっています。
10m歩行を10秒以内で行えれば、歩行を自立して行える一つの判断材料をして良いでしょう。
年齢別や性別の歩行速度や歩行率の平均
同年代より、歩行速度や歩行率などが悪い場合は、転倒リスクなどにつながるため気をつけてくださいね。
歩行速度のカットオフとは
歩行速度は生活の自立度との関係性もあります。
屋外歩行レベルのカットオフ
日常生活で『屋外を自立して歩けるレベル』と、日常生活で『屋外の一部を自立で歩けるレベル』の境界線は、0.8m/秒です。
これを10m歩行に変換すると、10mを12.5秒で歩けることが目安となります。
カットオフ値:10m ⇒ 12.5秒 以内
屋外と屋内歩行レベルのカットオフ
さらに日常生活で『屋外の一部を自立で歩けるレベル』と『屋内の歩行のみ』の境界線は、
0.4m/秒です。
これを10m歩行に変換すると、10mを25秒で歩けることが目安となります。
カットオフ値 : 10m ⇒ 25秒 以内
このように文献によって若干の違いはありますが、10mを10〜13秒程度で歩けることが重要となります。
歩行速度と日常生活の関係とは?
10m歩行テストを行う目的として、歩行自立の判断材料になることや、日常生活を安全に行うための判断材料にもなります。
今回は10m歩行の結果と横断歩道・転倒との関係について見ていきましょう。
横断歩道と10m歩行の関係
普段、何気なく渡っている横断歩道は何秒で青から赤信号へ変わるかご存じですか。
多くは1秒で1m歩く計算で設定されているそうです。
10mに置き換えると10秒ですよね。
やはり10m歩行スピードの一つの基準は10秒となっているみたいです。
信号の点滅時間を加えると1秒+αありますが、やはりある程度の歩行スピードが必要となります。
最近では、高齢者が多い地域等では青信号の時間調整が行われているらしいですが、交通渋滞等を考えると劇的な時間の延長は望めないため、やはり歩くスピードと渡るタイミングがポイントになります。
歩きの遅い高齢者の方は、必ず信号が赤から青に変わったら渡るようにしましょうね。
10m歩行と転倒の関係
10m歩行は転倒とも密接な関係があります。
先ほど歩行自立のカットオフ値として10秒とご紹介しました。
これは10秒以上かかる場合は転倒する可能性があることを意味しています。
そのため10m歩くのに10秒以上かかる場合は、歩行補助具の検討も視野に入れます。
たとえば、杖を使わずに10mは歩けるが10秒以上かかってしまう場合は、屋外を歩く時に杖の仕様を検討したりします。
このように歩行速度やバランス状況に合わせ杖などの歩行補助具を選択したり、転倒リスクが高い場合は見守りや介助下で歩くようにしましょう。
まとめ
今回は10m歩行についてご紹介してきました。
10m歩行は簡単にできるバランス検査の一つで、歩行を自立するための一つの判断材料となります。
ご自身の歩行状態を把握し、歩行に合った生活をするようにしましょうね。
特に横断歩道は気をつけてくださいね。
《参考文献》
1)長崎浩ら:臨床運動学 第3版.医歯薬出版株式会社.2008
2)Bohannon RW : Comfortable and maximum walking speed of adults aged 20-79 years :reference values and determinants. Age Ageing 26(1) .1997
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